中学受験と反抗期
中学受験のための準備期間中にどうしてもやってくるやっかいな問題があります。それが反抗期です。女子で早い子は3〜4年生から、男子では女子より1年〜2年遅れて4〜6年生頃になるでしょうか。ただでさえ、塾通いと家庭学習に時間をとられ、好きなことのできる自由時間が少なくて不満が多いのに、反抗期で親に対する反発が加わると、「ちっとも言うことを聞いてくれないんです」「勉強がはかどらなくて、ほとほと手を焼いています」という状況になります。そうした保護者からの相談を受けることがよくあります。
塾の先生もなかなかそこまでは気が付かないものですから、保護者、特にお母さんが一人で悩むことになりがちです。いったいどのように反抗期を乗り切ればよいのでしょうか。実は以前にも同様の記事を書いていますので、そちらも合わせてお読みください。
近頃では子どもの精神的成長が早まっているせいか、反抗期の始まりも早いと感じています。ですから中学受験準備を始める4,5年生では、多くのお子さんが反抗期の真っただ中にあると言えます。
親の言うことを聞いてくれない ⇒ 成績が伸び悩むまたは落ちる ⇒ 子どもを叱る ⇒ ますます反抗する ⇒ 親の言うことを聞いてくれない
このような悪循環に陥っているケースが多々あります。志望校合格という遠い将来のゴールについて見通しを持っている大人と、時間の感覚が未発達で将来が見通せない子どもの気持ちのすれ違いで、親だけがあせってしまい、「どうしてわかってくれないの」と親の不満が募ります。それでついつい口からきつい言葉を子どもに投げかけてしまうのです。
ところが、反抗期の原点は、親からの自立したいという気持ちですので、子どもに親の考えを押し付けてコントロールしようとする試みは、ことごとく失敗します。初めからボタンを掛け違えているからです。反抗期を通り過ぎた先輩ママさんたちにお話を聞くと、この時期の接し方で効果が高かったという声が一番多いのは、「黙ってやり過ごすこと」です。何を言っても反発してくるのだから、余計なことは言わずに嵐が通り過ぎるのを待つというわけです。確かに中学受験などなくて黙っていられるならそれはとても有効な方法だと思います。でも、言わないと勉強してくれないので、黙っていられないという方も多いでしょう。アドバイスするぐらいいいじゃないかと思いますよね。
そこで、どうしても口を出したいなら、「自立したい」という子どもの気持ちを利用します。自立したいということは、「子ども扱いしないで」ということですので、子どもを同じ目の高さにおいて、対等の立場で語りかけるのです。頭ごなしに「〜しなさい」ではなくて「お母さんはこう考えるけれど、あなたはどうしたいの?」と必ず意見を求めるようにします。どうしたいのかを聞いて、それが納得できるなら「そうしてごらん」と認めてやります。こうすることで子どもの自尊心は満足して、自分から言った行動を守ろうとするでしょう。
常に子どもに意見を求める、子どもに選択させる、こうした態度で接すれば反抗の仕方は随分とソフトになります。反発する壁が固いほど反抗は強くなり、壁が柔らかければ反抗は弱くなるのです。低反発な親になることが反抗期の子どもへの接し方のポイントです。
また、反抗の強さが親の性別によって違う場合があります。つまり、同性の親に対してより強く反発するケースと、異性の親に対しての方が反発が強いケースがあるのです。その場合は、より反発が強くない親の方が子どもとコミュニケーションをよくとるようにすると良いでしょう。反発されてしまう方の親は、少し我慢して離れて見守るようにします。反抗期というのは心の中に磁気嵐が吹き荒れているようなものなので、ちょっとしたマイナス刺激で大きく反応してしまいます。そんな状態では受験勉強がはかどりません。できるだけ刺激を減らして、凪の状態を少しでも長く保つことが受験と反抗期を乗り切るために必要です。
できる子なのに反抗期をうまくやりすごせなくて、受験に失敗してしまった例もあります。実は受験生が直面する最大の問題が反抗期なのかもしれません。親子で上手に乗り切りたいものです。