四谷大塚の特徴
四谷大塚は1954年に創立という長い歴史を持つ、いわば中学受験では老舗の存在として、今も多くの生徒さんが在籍しています。2006年に東進ハイスクールを経営するナガセの傘下となったことで、今後の運営・実績にどのような変化が出てくるかが注目されます。
メリット・デメリット
メリット
四谷大塚と言えば、上記にもありますように他塾にはない伝統が挙げられますが、最大の魅力はテストとテキスト、と言えるでしょう。 テスト:もとはテスト会としてスタートした四谷大塚ですので、毎週行われる『週例テスト』や、6年生の9月から4回にわたり実施される『合不合判定テスト』は確かな定評を得ています。特に『合不合』は、志望校判定のための模試としては、最も信頼できるテストとして、四谷大塚や提携塾に通っている生徒さんはもちろん、サピックスの生徒さんも受験します。このサピックス生の参加により、高い偏差値の信憑性がより確かなものになっていると言えます。
『週例テスト』は、レベル別に4つのコースにわかれており(上位からS・C・B・A)、入塾テストやその後の組分けテストでコースが決まります。最近では「復習ナビゲーション」と呼ばれるシステムが導入され、週例テストを受けた翌日には採点済みの答案がインターネットで返却、合わせてVOD(ビデオ・オン・デマンド)と呼ばれるインターネットを利用しての解説授業が実施されるかたちとなっています。パソコンを使ってのインターネット授業では一日の長のある東進ハイスクール(ナガセ)が株主となったことのメリットが出ていると言えるでしょう。
ただしテストコースについては、コース内順位が毎週はっきりと出てしまうことがあります。Sに上がったはいいけど、偏差値30という数字にモチベーションが下がるということも起こり得ることには、十分に気をつけておくべきでしょう。
テキスト:四谷大塚では『予習シリーズ』を主要教材として、その他『演習問題集』『サブノート』『計算と一行問題集』など、科目によっていくつかの副教材があるかたちになっています。どのテキストも無理ない問題構成、充実した解説などから、非常に高い評価を得ており、他塾の生徒さんでも活用することも多くあります。特にメインテキストの『予習シリーズ』は、中学受験生ならば誰しもが耳にしたことのある、メジャーなテキストです。『予習シリーズ』の「予習」とは、かつての日曜テストの予習、という意味で、テキストの構成は授業があって初めて成立するような、予習のためにつくられているかたちではありません。よりイメージがしやすいようにカラーで写真も豊富になっており、特に理科・社会が苦手な生徒さんにとっては、理解を進められる効果があります。
また、6年生の夏以降からは『四科のまとめ』がフル回転の活躍をすることとなります。その中でも社会・国語の『四科のまとめ』は、これまで習った範囲の総復習や理解度チェックに極めて有効な、受験の必須アイテムとなります。
デメリット
長く中学受験を牽引してきた四谷大塚ですが、最近数年間の実績においては、サピックス・日能研に大きく水をあけられた結果になっています。テキスト・テストともに高いレベルを有していますが、偏差値上位の生徒さんを他塾に取られているような印象もあります。他塾と比べても講師陣の平均年齢は高く、指導力そのものが低下しているとは想像し難いのですが、YT提携塾の早稲田アカデミーがグループの筆頭に上がるのではないかとも思われる勢いを有していることからすると、ますます四谷大塚の存在感が脅かされていると言えます。生徒さんが相性のよさを感じていて、少しずつでも成果が上がっている場合は問題ありませんが、成果が上がっていないのに、「伝統ある四谷大塚なのだから、預けていれば大丈夫」といった考え方のままでいることはとても危険です。中学受験塾の勢力図が大きく変わっていることをしっかりと意識するべきでしょう。
また、四谷大塚の最大の特徴であるテストについても、その取り組みには注意が必要です。通常の復習テストは満点を取ってもおかしくない内容で作られていますが、週例テストの場合、平均点が50〜60点に設定される、かなり厳しい内容と言えます。そこで解けなかった問題に悔しさを感じない生徒さんは、せっかくのテストからも何も学ぶことができなくなります。テストを教材として、積極的な姿勢で学習に臨むことが必須の条件になります。加えて、週例テストに過大に依存してしまうことにも落とし穴があります。テストで出た問題はしっかりと復習をする一方で、出なかった問題は振り返らないままになってしまう、といった習慣が身についてしまうと、理解度にムラができてしまうことにつながります。テストは復習教材として大いに有効ですが、ただ受け身でいるだけでは効果がないことに十分注意しましょう。
転塾について
四谷大塚→他塾の場合
上位校を志望しているためにより先を行くカリキュラムで演習したい、といった理由でサピックスへ、より安定したシステムの後ろ盾がほしいという理由から日能研へ、同じYT系でも塾とのより密度の濃いコミュニケーションをはかりたいなどの理由から早稲田アカデミーへ、それぞれ転塾を考えることもあるでしょう。早稲田アカデミーであれば、同じテキストを使用しているために、時期などをあまり考慮する必要はないでしょう。ただし、サピックスへの転塾では時期は要注意です。サピックスは進度が早いので、新6年生になる年度の切り替わりで入塾しても、既存の生徒さん達との差をうめるのが難しく、結果クラスも上げづらくなります。サピックスへ転塾するのであれば、できるだけ早く、5年生の夏くらいまでには入塾することが必要です。日能研への転塾時期は、講習明けでカリキュラムが変わる時期に移る方がスムーズに対応ができます。リミットとしては新6年生になる年度替わりの時期と考えるべきでしょう。
他塾→四谷大塚の場合
中学受験きってのメジャーテキスト『予習シリーズ』、模試として高い信頼を得ている『合不合判定テスト』を有し、また営業色の強すぎない落ち着いた雰囲気にも魅力を感じて、他塾から四谷大塚への転塾を考えることがあるでしょう。その場合には、できるだけ5年生の夏休み前後や、遅くとも6年生への年度替わりなど、カリキュラムの切り替わる時期を選ぶようにしましょう。サピックスのようにカリキュラムがかなり先を進んでいる塾からでしたら対応はしやすいかもしれませんが、できるだけカリキュラムの初めから在籍をしてペースをつかむことが必要になります。特に塾内テストですが、日能研のカリキュラムテストが4年生までは2週に1回のペースであるのに対し、四谷大塚では4年生から週例テストが毎週行われます。このペースに慣れている既存の生徒さん達に引けを取らないためにも、できる限り早めに入塾をしましょう。
合不合判定テスト
初めて合不合判定テストを受ける際には、気をつけるべきことがいくつかあります。まずは問題量が多いこと。これまでYT系のテストに慣れていた生徒さんでも、その量には戸惑い、また上位校を目指す生徒さんでも、算数で解かないままの問題があるくらいです。入試本番さながらの時間配分の練習としての意識も持って臨みましょう。またテストの時間割が、これまでは算数と国語、理科と社会の間には休憩が入らないかたちとなっていました。知らずに(監督官の注意を聞かずに)受けた生徒さんは、算数を悠々と解いていて、気がついたら国語が50分のはずが20分しかなくなった、といった事態も招きかねません。年に4回しかない大事なテストです。十分に注意をしましょう。
志望校対策
6年生の11月には『学校別判定テスト』も実施されます。日程的にサピックスの学校別オープンと近くなり、特に指定された学校は偏差値上位校が多くなることから、若干サピックスオープンに生徒さんが流れることはありますが、それでも入試問題からシミュレーションされた内容ですので、極めて有効です。また、6年生の9月からは、日曜日に『学校別対策 特別コース』が開催されます。最難関校対策の『特別コース』、難関校対策の『特訓コース』、難関〜中堅校対策の『入試実戦特訓コース』の3つに分かれ、『特別コース』と『特訓コース』には選抜試験があります。『実戦コース』も対象校が幅広くあることもあり、多くの生徒さんが集まっています。