学習の基礎力は問題文を理解する力
■問題の内容をイメージする力が大事
子どもが中学受験を経て、高校、大学と進むのを見ていると、本当に必要だった学力は何かと考えることが多くなります。それは問題文を読んで理解し、自分のものとする力ではないかと感じます。これはあらゆる教科の基礎となるものです。
例えば次の算数の問題を見てみましょう。
【問題】
花子さんは、りんご1個とみかん2個を買って200円を払いました。太郎君は同じお店でりんごとみかんを1個ずつ買って150円を払いました。りんご1個の値段はいくらでしょうか?
問題文を一読しただけで答えが分かりましたか?少なくとも一度は読み返しませんでしたか?これがもし、次のように図が示してあったらどうでしょう。
- りんご:○ みかん:●
- ○●● → 200円
- ○● → 150円
上と下の違いはみかん1個(●)でその差は50円だからみかんは1個50円、りんごは100円と直感的に理解できます。問題の文を図のようにイメージできるかどうかが、問題が解けるかどうかの分かれ目なのです。
■問いを理解することがポイント
勉強ができない、苦手と言う場合に次のようなケースに分かれます。
- ・その教科の知識が無い
- ・問いが理解できない
これに「嫌い」というのも加わるでしょうが、嫌いになるのは「できない」からで、できない理由は大きくこの2つです。知識については覚えれば追いつくことができます。でも問いが理解できない方は簡単に解消できません。
算数以外の教科でも同様です。例えば社会。
- ・地形によって気候の違いが生じる
- ・地形や気候の違いで産業に特色が生まれる
- ・地形、気候、産業の違いで人々の生活が違う
- ・これらの違いが文化の違いとなる
- ・違うものがぶつかると争いが起こる
- ・争いとその解消の過程で歴史が生まれる
単に断片的な知識だけを吸収しても、その背景にある考え方やアプローチの仕方を身に付けていないと、問いの意味が分かりません。
この段階の学習は、子どもの精神の発達からすると中学生になってからの方が無理なくできるのですが、中学入試ではこうした内容理解に踏み込んだ出題がなされていて、成熟度の早い子が選ばれやすくなっている現実があります。
■問いが理解できるようになるためには
問いを理解するためにはまず、「文字=書き言葉」を理解することが必要です。勉強が苦手な子はこれがうまくいかないわけです。実は話し言葉の方は少なくとも数万年前からあったので、言語理解の遺伝子がヒトにはあるのです。一方書き言葉は後天的にしか習得できません。なぜなら文字は発明されてから数千年しか経っておらず、DNAに刻まれるには時間が短過ぎるからです。
したがって、耳から聞く言葉は理解できても、文字を読んで理解することの方が難しくても仕方がないのです。ポイントは目で見た文字を頭の中で言葉に置き換え、人が話すような抑揚にして脳内に再現できることではないかと思うのです。論理的にものを考えられる発達段階となる10歳過ぎに、いきなり書き言葉を理解しろというのは無理があります。人類の歴史で言葉による伝承から文字による記録に移行したように、読み聞かせから読書という段階を経た方がスムーズに書き言葉の世界へ入れます。
また、子どもが問題が分からないと言うときには、もう一度問題文を一緒に声を出して読んでみます。区切り方が不自然なときには正しい理解ができていません。問題を読み直すだけで「あ、わかった」と言う事さえあります。子どもと言うのは、おとなのように「これができないと自分が困る」という意識が低いので、何度も繰り返し問題文を読んで理解しようとしないもの。それを手助けするのが大人の役目ではないでしょうか。
そうして受験勉強で手一杯になる6年生になる前に、たくさんの本を読んで、さまざまな他人の感じ方や考え方に触れるということも重要です。さまざまな物事の因果関係を推理したり、文を書いた人の意図を理解するには、自分とは違う見方があるということを知る必要があります。そうして独りよがりの考えから抜け出ることができるのです。
書き言葉は後天的にしか身につかないとすれば、これを後押しする環境を整えてやりたいものです。読書が好きになる導き方については、改めてご紹介することにします。
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