習っていないからできない?
以前に、『低学年で種まきを』という記事を書きました。今回も低学年のお子さんをお持ちの方に読んでいただきたい内容になりました。
お世話になった人に頼まれて、その方の低学年のお子さんの勉強を見ています。家庭学習の習慣がついているので、学年相当の漢字や計算は学校で学習する前にできるようになっています。筆算の足し算引き算もできますし、学校では習っていない九九も知っています。
教科書準拠の問題集はすんなり解いてしまいます。そこで少しひねった問題を与えたところ、意外な盲点があることが分かりました。算数で計算そのものは1年生の段階しかない、オリジナルの文章題をやらせてみたのです。彼はスラスラと鉛筆を走らせ計算して答えを出しました。「惜しい、もう少しで正解だったね。ちょっと見落としたところがあるから、もう一度考え直してごらん」と言いました。すると考え込んでしまい、ついには「習っていないからできない!」と彼は怒り出したのです。
それは次のような問題です。
【できなかった問題】
赤と白のチューリップがあります。赤いチューリップは白いチューリップより5本多いそうです。数えて見たらチューリップは全部で9本ありました。では赤と白のチューリップはそれぞれ何本あるでしょうか?
【間違った解答例】
- 式 9−5=4
- 答え 赤 5本 白4本
合計は9本ですが、赤が白より5本多くなっていません。
これが次の形の問題ならばさっと解けるのです。
【できた問題】
赤と白のチューリップが全部で9本あります。赤いチューリップは7本です。では白いチューリップは何本でしょうか?
- 式 9−7=2
- 答え 2本
普通の引き算です。低学年の引き算の問題集なら典型的な出題でしょう。全体があって部分があって、未知の部分を計算で求めます。先のできなかった問題でつまづいたのは、「赤いチューリップは白いチューリップより5本多いそうです」の部分です。白いチューリップの数が分からないということに気づかなかったのです。彼は問題を読んで引き算の問題だと思いました。だから前の問題文にある9から5を引いて4を出したのです。典型問題はそれで解ける問題ばかりでしたから、何の疑いも無く同じやり方をしてしまいました。
中学受験の算数問題を見たことのある方なら、和と差の問題だと気づくでしょう。普通は線分図を描いて違いの5を省いて、同じ長さの線が2本あるから、残りを半分にして白いチューリップが2本と出ます。
- 白 ーー
- 赤 ーーーーー ーー
2本 赤と白合わせて4本
これには後日談があります。後日同じ問題に再度挑戦してもらいました。すると今度は「白いチューリップの本数が分からないからできないよ!」と言うのです。
和と差の問題や線分図を知らなくても、全部で9本のチューリップなのだから、まず9本のチューリップを絵に描けばよいのです。
○○○○○○○○○
そうして違いが5本になるまで、○を塗ります。
- 赤●
- 白○ ○○○○○○○ 7本だ
- 赤●●
- 白○○ ○○○○○ あ、5本だ
すぐ答えにたどり着きます。
どうやら、教科書や学校では絵に描いて解き方を習うのに、自分で絵を描いて考えるという習慣が身についていないようです。「習っていないからできない」という反応はよくあるそうです。習っていなくても考えて見ようと喰らいついて欲しいもの。私は工学畑の出身なので技術的課題について他人と議論するときには、ホワイトボードに問題点を描いて考えていました。図解して考えたり説明する力は大人になっても役立つものです。中学受験では算数はもちろん、他の科目でも図や表にまとめる力が物を言います。低学年の内からこの力をつけておきたいものです。
その後、勉強を見ている彼のところには100円ショップで買ったホワイトボードを持参するようにしました。彼も、図解しながら問題が解けるようになってきました。ややこしい問題の時には、4コマ漫画のようにコマ割をして、段階的に絵を描く工夫を編み出しました。皆さんのお家でも試してみてはいかがでしょうか?