第9回
-国語でつまずいている５年生のご父母へ-
吉田講師（中学受験鉄人会スーパープロ家庭教師）
５年生もこの時期になると、かなり入試本番に近づいたレベルの文章を取り扱うようになるのが普通です。入試の過去問をそのままテキストで取り扱う場合も少なくありません。その為、急に国語が出来なくなってしまったという感覚が生まれ、不安に陥りがちなものです。とりわけ、今まで比較的平易な文章を扱っていた塾においては、その傾向は強く現れてしまいます。
私個人的には、その不安が生じないように、扱う問題（文章）を吟味し、序々に高度な語句、内容に慣れていってもらうことを念頭に置いて指導しています。
論説文であれ、文章の難易度はそこで使用される語句のレベルによって決定されるものですが、実際の中学受験では小学生の日常生活（時として、大人のそれにおいてさえも）では使用されるはずもない難しい表現が散りばめられていることに驚かれる方も多いことでしょう。この時期に、是非じっくりと腰を落ち着けて文章を読み込むことを身に付けさせるようにして下さい。この段階では、あえてスピードではなく理解度を重視すべきです。
今は受験本番に向け、本格的に基礎学力をつけ始める時期です。来年、ラストスパートをかける時、「やる気はあるけど頭（知識）がついてこない」のではどうしようもありません。そうならない為にも、「本当の学力」を今からしっかり身に付けることです。
中学受験では、早熟が要求され、実際その要求に十分に答えられる子供も多く存在します。が、しかしそんな時代の潮流に乗りきれる子供たちばかりではありません。むしろ、少子化にともなう過保護により、いわゆる「大人びた子供」は身体面は別として、精神面においては極めて少数になっていると言えます。人は、使用する語句により、その精神レベルが決定される以上、現代のような早熟社会ではより難しい大人びた言葉を身に付け、使いこなすことが早い段階に、つまり、小学生のうちから要求されることになるのです。
ですから、今は難しい文章をしっかり読めるかということではなく、その内容を知識として吸収していくという姿勢で良いと思います。中学受験で扱われるテーマはどんなものか、そこではどんな語句が用いられるのか、少しずつわかるようになれば良いのです。
漢字の重要性は、再度認識し直すべきです。漢字力はその人の国語力をある程度象徴するものです。漢字が書けない、読めない人は言葉の意味もわからず、当然文章読解力も乏しくなります。漢字は読み書きだけでなく、意味もしっかり学習することを心掛けるようにして下さい。入試では10点〜20点の配点になる学校がほとんどです。合格ラインが60点前後だということを鑑みれば、その重要性は明らかです。
塾の授業では何か自分なりのpointを持つこと。何か１つで良いから、確実に体得することを心掛けるようにさせて下さい。今日は記述がうまく書けた、今日は接続詞が解けた、等１つ１つはちょっとしたことでも、１年続ければ大した事になります。決して、「〜が出来なかった」というマイナス思考になってはいけません。実力のある生徒さんはより完成度を高めるため、間違ったところを反省し、弱点克服すべきですが、まだ実力がない生徒さんは一度に何でもかんでも吸収することは無理なのです。
さて、何か習得しようとする時、基本型を体得することが上達への第一歩であり、最短ルートでありますが、その為には、自分という存在をある程度失くし、素直に受け入れる姿勢が必要です。スポーツや楽器を習うことを考えればよくわかるでしょう。
ところが勉強においては、これが出来ない人がほとんどだと感じます。基本に合わせるのが面倒くさいので、とりあえず自己流で勉強している人が中・高となるにつれて増えていくのが現状です。この種の生徒さんの特徴として、別のより良い方法があっても耳を貸さないということがあります。自己流で適当に処理するという楽な方へ流れていくのです。
話が少しずれましたが、このパターンに陥らない、素直な心を持つ柔軟さを持つことが必要です。各科目とも難しくなるこの時期だからこそそれは重要視されなければならないと考えます。心を開けば身体に入ってくるものも、堅く心を閉ざしてしまえば、何も入ってこないのです。
まず「習うより慣れろ」ということです。考えるのはその後でよいのです。知識がデータとして蓄積されないまま何を考えても始まらないのです。深く考え、問う為にデータを調べ、input、つまり暗記するということの重要性、日々の学習の継続の重要性をお子様に強く意識させておいて下さい。
