第4回
吉田講師(中学受験鉄人会スーパープロ家庭教師)
「テストで記述のところだけ書かないんです。」ということを受験生の親からよく聞きます。
特に、麻布、武蔵など漢字以外、全部記述式の設問のパターンの学校を目指しているなら深刻なものになってきます。
「記述が出来ない=国語ができない」という図式が出来上がっているのも、ご両親が記述にこだわる理由の1つだと思います。
それと同時に、「記述の教え方がわからない。」ということもよく聞かれます。
確かに、他の教科と違って、国語の記述は問題集の答え(参考答案)とまるっきり同じでなくとも点はもらえるので、実際のところどのように書けていれば良いのか判断することが難しいと思われます。
記述を書けないというのは、ほとんどが本文の内容の理解の不十分さに原因があるのです。まったく書けない場合はその可能性大です。読解力をつけることにより、また少しずつでも書いていくうちに、ちゃんとした記述ができるようになることが多いのです。
問題なのは、一応書けることは書けるが、あきらかに文として(日本語として)変な文を書いてしまう場合です。
自分で書いた答えを客観的に見て、変なことに気付かない、あるいはうまく修正できないのです。「て、に、を、は」がめちゃくちゃだったり、前半と後半の流れが不自然だったりするので、大人でなくても、わかっている人が見れば、その間違いは一目瞭然なのですが、なかなか自分ではうまく書きかえることができないのです。
もちろん、この場合も本文の内容を取り違えていたりするものなのですが・・・。
それから、ある程度記述力がある人でも、あるキーワードを与えられ、その語句を使って記述せよというパターンで、30字以内でというような字数指定もされている場合はかなり書きづらいものとなります。
とりあえず、与えられた語句は使ってみたものの、字数オーバーとなることが多く、字数の調整がうまくできないのです。
これらの対策として、ご家庭でご両親にとっても、やりやすいものとして、物語でも論説文でも、その要旨を100字以内、50字以内、30字以内というように字数を変えて書いてみることをおすすめします。
1つ例を挙げておくと、
【クラスでいじめにあっていた彩が、転校生で人気者のすみれと一緒に帰る
ようになったことをきっかけに、すみれと仲良くなり、自分にも味方がい
るという自信を持ち、だんだんクラスに溶け込んでいく物語。(94字)】
というのがある物語を100字以内でまとめたものだとして、これを50字以内でまとめる練習をしてみると、
【
いじめられていた彩が、転校生のすみれと仲良くなったことで自信を持ち、
クラスに受け入れられていく物語。(50字)】
「人気者」ということばを省略せずにさらにレベルアップさせると、
【
いじめられっ子の彩が転校生で人気者のすみれと仲良くなることで自信を
持ち、クラスに溶け込んでいく物語。(50字)
】
どこを変えたかわかりますね。「受け入れられていく」は字数の関係で元の「溶け込んでいく」にもどしました。
また、これを同じ50字で、
【
いじめられっ子の彩が、人気者の転校生すみれとの○○を○に、○○○に
なり、クラスに○○○○○いく物語。(50字)】
と書き直すことにすると、それぞれどんな言葉が入るでしょうか。
答えは順に、交流、機、前向き、うちとけて、です。
このような遊びも面白いものです。
最後に、構成という点で、とても興味深いものがありますので紹介しておきます。
「厚紙で魚の形を作り、これにイシダイのようなもようをつけ、水槽の中に入れます。」という文について、「水槽の中」に入れるものは何か、25字以内で答えなさいというものです。
一番簡単な答えは「厚紙で魚の形を作ったものに、イシダイのようなもようをつけたもの。」でしょうか。しかしこれでは原文そのままという感じで、字数もオーバー(32字)していて、「もの」がくり返されていて語呂がよくないです。
そこで「もの」を1つにして、「厚紙で魚の形を作って、イシダイのようなもようをつけたもの。」(29字)まだ字数オーバーです。ここで大胆な発想の転換が必要となってきますが、子どもにとってそれが1つの壁になるのです。
「魚の形」から始めてみると、「魚の形をした厚紙に、イシダイのようなもようをつけたもの。」(28字)うーん、まだ字数オーバーです。「魚の形の厚紙にイシダイのようなもようをつけたもの。」(25字)こんどはピッタリおさまりました。もちろん「もよう」を「模様」として字数を減らすのも良い方法です。
字数制限がいかにうっとおしいものかわかっていただけたと思います。
ちなみに、これは予習シリーズ4年上から抜粋しました。
記述式の設問では、多少アレンジするものの、本文を参考に書いていけば良いのです。野球で言えば、場外ホームランでなくて、まずはヒットで良いのです。あまり難しく考えると何も書けなくなるものです。
それがわかれば自然と‘書く勇気’が沸いてくるのです。苦手意識や、まちがってはいけないというネガティブな考えが子どもを書くことから遠ざけているのではないかと思います。
今日はここまでとします。