第2回 割合の線分図
斎藤講師(鉄人会スーパープロ家庭教師)
「基準量」とは割合の「もとにする量」に当たります。割合についてはもうすでに理解しているという人がいるかもしれませんが、一応確認のために割合の考え方をまとめておきましょう。
割合とはある量を1とおいて、他の量の大きさをはかったものです。1とおいた量のことをもとにする量(基準量)、他の量のことを比べられる量(比較量)といいます。
たとえば、あなたが世界の王になったものとします。世界の王になれば何でも自分の好きなように決めることができます。そこで、あなたは自分の身長を1として、他の人の身長の大きさを表すというきまりをつくりました。すると、他の人の身長はすべてあなたの身長がもとになるので、あなたより大きい人は1より大きくなるでしょう。小さい人は1より小さくなるでしょう。
そして、大部分の人の身長は整数ではなく、小数や分数になります。
あなたのお父さんが1.2になったとすれば、それはお父さんの身長があなたの1.2倍であることを表しています。1.2倍は分数にして倍と表しても同じことです。このとき、1より大きい場合は「〜倍」という単位がありますが、1より小さい場合は「〜倍」とはいえません。なぜなら,「〜倍」というのは大きくなるという意味をもつために,小さくなる場合には使えないからです。「0.5倍」などというときがありますが、これは言葉の誤用です。習慣として許されているだけです。つまり、割合を考えるとき、1より大きくなる場合は「〜倍」という単位をつけてもよいが、1より小さい場合、分数や小数で表された割合には単位がないことになります。
それでは1より小さい場合はどのように表せばいいのでしょうか。分数や小数で表すこともできますが、そうすると単位をつけることができません。しかも、分数や小数ではきたない数になるのであつかいにくくなることがあります。そこで、ふつうは百分率や歩合で表します。
百分率とはもとにする量を100とおいたものです。 歩合はもとにする量を10とおいたものです。右の表のア〜ナまでの空らんを埋めてみましょう。(この解答は省略します)
割合の線分図は差の線分図です。それは割合が2つの量を比べていることからも分かります。例題を解きながら割合の線分図を学習していきましょう。ただし、この講座は線分図のとらえ方を中心とした内容ですから、割合の公式や求め方などはすでに理解しているものとして進めていきます。
[例題1]割合の3用法-百分率・歩合
Aの身長は150cm、Bの身長は120cmです。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)Bの身長を1と表すとき、Aの身長はいくつになりますか。分数と小数で答えなさい。
(2)Aの身長を1と表すとき、Bの身長はいくつになりますか。百分率と歩合で答えなさい。
[解説]
この講座では割合の線分について、次のようなきまりをつくることにします。
(ア)分数・小数の割合には必ずマル囲い,サンカク囲いなどをする。
(イ)囲う記号の順番はマル→サンカク→シカク→ギャクサンカク→カッコとする。
(ウ)割合は線の下に、実際の単位がある量を線の上に書く。
(エ)もとにする量を上に、比べられる量を下にして差の線分図を書く。
(オ)問題文の中に出てくる百分率や歩合は分数・小数に表してから線分図に書く。
割合でもっとも大切なことは「もとにする量」がはっきりと分かるようになることです。これがわかるまではあまり難しい問題に取り組まない方がよいでしょう。
(1)Bの身長を1とおけば、Aの身長は1より大きい数で表されるので、これはAの身長がBの身長の何倍かを求めることと同じです。きまりにしたがって線分図に表すと図1のようになります。
(2)Aの身長を1とおけば、Bの身長は1より大きい数で表されるので、これはAの身長がAの身長のどれだけの割合かを求めることと同じです。きまりにしたがって線分図に表すと図2のようになります。
[練習1](解答はこの回の最後にあります。)
次のをうめなさい。(必ず線分図を書くようにしましょう)
(1)Aの体重は56kg,Bの体重は35kgです。Aの体重に対するBの体重の割合を百分 率で表すと%です。
(2)kgの24%は360gです。
(3)600円の2割5分は円の7.5%にあたります。
[例題2]割合の差と相当算
次の問いに答えなさい。
(1)持っているおこづかいのうち、A店で全体の、B店で全体のを使いました。A店とB店で使ったお金の差は150円でした。はじめにおこづかいは何円ありましたか。
(2)容器に砂糖が入っています。この容器に入っている砂糖の重さのを使うと容器ごとの重さは670gになり、を使うと容器ごとの重さは370gになります。入れ物の重さは何gですか。
[解説]
分数や小数、簡単な問題でも割合の線分図を書くようにしましょう。計算でできるような問題でも線分図を書くことが大切です。簡単な問題は計算でやればよいというのはテストのときの話です。これは面積図にもいえることですが、基本的な問題を線分図で表すことができないのに、難しい問題を線分図でとらえることなどできるわけがありません。本当に線分図を使いこなせるようになりたいのなら、なんでも線分図で表してみるくらいの気持ちが必要です。
相当算では線分図を左からも右からも書くことがあります。どちらがいいかはそのときの問題によりますが、原則として左から書いていき、この例題の(2)や損益算などの差を中心にして考える問題は右から書いていきます。
(1)とはどちらも全体のおこづかいをもとにしています。そして、の方がのよりも150円多いということも通分して比べれば分かります。つまり、のなかにはと150円が含まれていることになります。それを差の線分図を利用して右図のように表します。150円は-=にあたるので、150÷==1,500円になります。
(2)もとにする量は入れ物に砂糖をいっぱいにいれたときの砂糖の重さです。入れ物の重さは含めないので注意しましょう。670?370=300gの重さが-=にあたるので、?は300÷=720円になります。
[練習2](解答はこの回の最後にあります。)
(1)あるお店では,ペン1本は所持金のの金額で、ノート1冊は所持金のの金額でした。
ペン1本とノート1冊の金額の差は75円でした。ノート1冊の値段は何円ですか。
(2)石油が入っているカンがあります。全体のを使ったときの重さをはかると12.8 kgでした。また、全体の─を使ったときの重さをはかったら8.4kgでした。このカンだ けの重さは何kgですか。
[例題3]余りの出る相当算
次の問いに答えなさい。
(1)ある学校では、男子は全体のより14人多く、女子は全体のより12人多くなっています。生徒全体の人数は何人ですか。
(2)ある学校の入学試験で、合格者数は受験者数のよりも4人少なく、不合格者数は受験者数のよりも17人少なかったそうです。受験者数の総数は何人ですか。
[解説]
ここでは「より多い」と「より少ない」の表し方を考えましょう。多い・少ないは割合と同じように、大小2つの量があって、どちらをもとにするかで言い方がかわります。「より多い」という場合はほとんどそのまま線分図に表してかまいません。問題は「より少ない」の方です。
第1回の差の線分図の表し方のところで、「Aよりだけ少ないB」を「Bより〜多いA」と言いかえました。「少ない」が出てきたら、できるだけ「多い」とすることにより線分図に表しやすくなリました。もう一つは「少ない」を「足りない」とみて、不足部分を補う表し方です。(2)ではこの「足りない」として表してみましょう。
(1)割合部分と人数部分の表し方によって、線分図 から分かることがかわってきます。図1のように 表してしまうと、14人と12人のそれぞれの割 合は分かりません。ところが、図2のように表せ ば、14+12=26人が1-=であることが分かります。このようにして、単位 のある量どうしや割合どうしを和として表すこと で、いっそう分かりやすくなります。26÷=144人が全校生徒です。
(2)「少ない」を「足りない」と考えて,足りない部分を加えます。すると図3のようになります。ここから下の線分図を差の線分図にすれば図4のようになって4+12=16人が、+-1=にあたることが分かります。 16÷=756人
[練習3](解答はこの回の最後にあります。)
(1)あやこさんがまりこさんの家に行くのに、最初は分速60mで歩き,とちゅうからは分速160mで走りました。歩いた時間は全体にかかった時間の─より3分多く、走った時間は全体にかかった時間の─より5分多くなりました。二人の家は何km離れていますか。
(2)箱の中に赤と青の鉛筆が何本か入っています。赤鉛筆は全体のより18本少なく、青鉛筆は全体の─より2本少なく入っています。青鉛筆は何本入っていますか。
【算数の豆知識】
大きい数や小さい数の表し方を知っていますか。日本は数の表し方を中国から学びましたが、そのもともとの考え方はインドから取り入れたものなのです。また、最近ではコンピュータ用語としてメガバイトやギガバイトなども耳にするようになりました。その西洋の単位もいっしょに見てみましょう。
◆練習問題の解答
(練習1)(1)62.5% (2)1.5kg (3)2000円
(練習2)(1)50人 (2)2kg
(練習3) (1)3.5kg (2)58本