第24回 - 頻出の化学物質 金属1 -
安達めぐみ講師(鉄人会レギュラープロ家庭教師)
前回、中学入試過去問題を見て、化学分野から、ものの性質や実験については、必ず出題されると分析しました。また、ものの性質で入試に出題されやすい内容として、第1に金属の反応と性質を挙げました。今回は、中学入試理科で頻出の金属について、詳しくみていきます。
約百十種類の元素の80%は金属元素です。化学で使用する元素周期表では、左寄りに並んでいます(左側から金属性が強い族が並んでいます)。そのうち、小学理科や中学受験では、10種類あまりの金属がよく取り上げられてきました。まず、金属らしい金属を取り上げて、その出題されやすいポイントを示します。
1)金: 金色の光沢、高価な金属、高温(1000℃以上)で柔らかくして加工しやすい、という性質があります。
・反応性が低いので、塩酸には溶けない。
中学受験の理科で出題されやすいのは、金属板を、塩酸などの水溶液に反応させる実験です。水素が発生する金属と発生しない金属を判別させることがあります。(イオン化傾向を意識した出題でしょう)。
王水には溶けることは、中学課程以降で習います。王水は、濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積で混合したものです。
・密度が大きい。重金属(密度4.0g/cm3以上の金属)の中でも、金は大きい金属のひとつ(19.3g/cm3)です。同じ体積でも、密度がちいさいものより重くなることから、密度と重さの出題で取り上げられる可能性があります。
2)銀: 最も電気伝導性、熱伝導性が大きい金属です。
電気伝導性、熱伝導性は、銀、金、銅の順に大きいが、銅のほうが銀より安価なので銅線として使用することが多い訳です。
・日光写真: 塩化銀(白色)は、光があたると銀と塩素になります。
2AgCl → 2Ag +Cl2 (中学課程以降では、化学反応式で習います)。
・塩酸には溶けない。濃硝酸には溶ける。
従って、銀を塩酸につけても、水素は発生しません。
・密度: 10.5g/cm3
3)銅: 小学理科では、電気の実験では電気を通す銅線を使用することがよくあります(電導性)。化学反応の実験に小さい銅板(赤銅色)を使用します。
・銅のさび: 銅がさびると緑色になります。この緑青(ろくしょう)は、銅の特徴として説明されることもあるでしょう。この主成分(化学式CuCO3?Cu(OH)2)は、中学受験理科では特に細かくは問われないと思われます。
・酸化銅: 酸化銅は、中学理科で化学反応式を習うときに、必ず覚えます。
2Cu + O2 = 2CuO(空気中で、銅を加熱して酸化させる。)
酸化銅(?)(CuO)は黒色です(酸化銅(?)(Cu20)は赤色で、詳しくは中学課程以後に習います。)
・銅の合金: 2種類以上の金属(元素)を混合したものを合金といいます。中学受験では、身近なものを題材に取り上げられやすいので、一応見ておくといいと思います。
ブロンズ(青銅:銅とスズの合金で、青銅色。彫刻などに使用)、
しんちゅう(黄銅: 銅と亜鉛の合金で、黄金色。
トランペットなどの楽器に使用)
・塩酸には溶けず、水素を発生しない。イオン化傾向が水素より小さいので、塩酸には不溶です。熱濃硫酸や硝酸(濃硝酸と希硝酸)になることは、高校課程で習います。
・硫酸銅:水溶液への溶けかた(溶解度)で、出題されやすい物質です。
水溶液が青色なのが特徴で、問われることがあります。
乾燥した硫酸銅(無水硫酸銅)は白色で、水で湿ると(水和物)になると青色になります。
・密度: 密度は9.0g/cm3で、金、銀、銅の順に大きいことがわかります。