第18回
- 地球環境問題の出題にそなえて 酸性雨2 -
安達めぐみ講師(鉄人会レギュラープロ家庭教師)
地球環境問題に関心が高まっています。そこで、その問題に関連した出題が、中学受験でも増えると予想されます。
その一つ、酸性雨は、理科の化学分野と生物分野で関連して問われることがあるでしょう。
酸性雨は、雨や雪、霧に、窒素酸化物(ちっ素酸化物)や硫黄酸化物(いおう酸化物)、あるいは二酸化炭素が溶け込んで、強い酸性になったもので、pH5.6以下の雨をいいます。二酸化炭素が溶けた場合、pHは通常5.6となりますが、ちっ素やいおうが溶けた場合、硝酸(しょうさん)や硫酸(りゅうさん)という強い酸ができるので、pHは5.6よりだいぶ小さくなります。
BTB(ブロモチモールブルー)溶液では、酸性(pH1?6.2)が黄色、中性(pH6.3?7.5)が緑色、アルカリ性(pH7.5?14)が青色になるので、BTB溶液と酸性雨を加えると、黄色になります。この、BTB溶液は、生物分野で、呼吸と光合成で、二酸化炭素と酸素の量を調べるときに、よく利用されます。
生物分野では、酸性の強い雨が降った時に起こる生態系(せいたいけい)への悪影響がよく説明されるようです。例えば、
- 1) 森林破壊:強い酸によって、樹木や草の葉や幹が立ち枯れてしまいます。土壌が、酸性化してアルミニウムが溶け出すなど、多くの原因が考えられます。
- 2) 光化学スモッグの発生による、健康への影響:目の痛み、呼吸困難などが考えられます。
- 3) 水質汚濁:水に硫酸(りゅうさん)や硝酸(しょうさん)成分が増え酸性化し(湖沼の酸性化)、 その水が土壌に染み込んで植物や動物に悪い影響を与えます。 水道管を溶かして、金属成分が溶け込み飲料水を汚します。北欧では、水道水が約pH1にもなり、溶け出した銅によって、髪が緑色になった例もあるそうです。
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4) 酸性に敏感な生物の変化:以下のような汚染に敏感な植物があり、環境汚染の指標植物といっています。
1:花びらに斑点ができる。 降り始めの雨は、pH2?3で強い酸性で、これが雫(しずく)となって、花びらの色素を変化させます(アサガオ)。
2:葉に斑点ができる。
ちっ素酸化物によって:ハイビスカスやペチュニア、アザレア(ツツジ)など。
いおう酸化物によって:コスモスやバーベナなど。
3.葉が黄色になる、落葉する:アサガオ、ペチュニアなど - 5) ブロンズ像(銅とスズの合金)を溶かす。
(3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O , Sn + H2SO4 → SnSO4 + H2↑) -
6) コンクリートや大理石の彫刻を溶かす。
大理石(炭酸カルシウム、石灰石)は、彫刻だけでなく、貝殻や真珠、鍾乳洞、セメントの成分でもあります。小学生は、炭酸やカルシウムは習いますし、炭酸カルシウムに塩酸を加えると、二酸化炭素が発生することも実験で聞くことがあります(CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2)。
このような被害をもたらす酸性雨に対する対策には、次のようなものがあります。
ちっそ酸化物やいおう酸化物は、車の排気ガスから発生することが多いので、これらの成分を発生しないエンジンを搭載した車の開発が進められています。(ハイブリット車や電気自動車として、最近市販されはじめました)。