第17回
- 地球環境問題の出題にそなえて 酸性雨1 -
安達めぐみ講師(鉄人会レギュラープロ家庭教師)
中学入試問題では、地球環境問題に対応して、それに関連した出題が増えることが予想されます。そこで、中学受験理科の中でも、頻出内容を紹介し整理しています。今回は、酸性雨について考えてみます。
酸性雨は、環境問題の重要な用語の一つです。小学理科や中学受験理科でも少々習いますが、詳細については元素記号や原子、分子式について習い始める中学課程以降高校化学で習います。
中学受験理科では、酸性雨は、まず化学分野で触れられることがあります。
例えば、
- 1) 窒素と硫黄、酸素といった、重要な物質に関係した現象として、
- 2) 酸性とアルカリ性、リトマス試験紙とBTB溶液による酸性とアルカリ性の検査に関連して習うことになります。
1)では、酸性雨の原因が、雨や雪に窒素酸化物(ちっ素酸化物)や硫黄酸化物(いおう酸化物)、あるいは二酸化炭素が溶け込んで、強い酸性になったためであると説明されます。この窒素酸化物(NO、 NO2、など)や硫黄酸化物(SO、 SO2、 など)は、工場やごみを燃やした時に出る有害物質で、酸素がいくつか結合していることから、NOx(ノックス) SOx(ソックス)とも呼ばれます。中学受験で、分子式自体は解答で求められることはないですが、設問の文章中に説明されることはあるかもしれません。二酸化炭素は燃焼した時に発生しますが、ごみや燃料の燃焼が大量であれば、その分過剰発生します(地球温暖化の原因)。通常二酸化炭素は、雨にとけ込んで弱酸性になりますが、pH5.6以下の雨を酸性雨といっているので、pHによっては二酸化炭素は酸性雨の原因となります。
実は、「酸化物」は中学課程から習い始める内容(酸素原子が他の原子に結びついた分子)なので、小学生には、酸化や還元についてごくわかり易く説明しないと、わからないと思います。(「酸化物」ってなんですか?と質問されることがすぐ予想されます。)小学生には、「空気中の酸素が、ちっ素やいおうと結びついたもの」と説明するのが一番いいと思います。窒素と酸素については、小学理科の中で、「だいじなぶっしつ(物質)」として必ず習います。硫黄(いおう)についても、温泉の成分などとして触れられることがあります。
2)は、頻出問題です。pHについては、これも詳しくは中学課程以降に習いますが、リトマス試験紙とBTB溶液は重要事項として小学理科で習うため、酸性雨が出題された時、問われる可能性が高いものです。
リトマス試験紙:リトマスゴケ(コケ植物の一種)の成分を、小さい紙にしみこませて使用する。酸性(詳細にはpH1?5)で赤色、中性(正確には弱酸性と中性、弱アルカリ性のpH5?9)で紫色、アルカリ性(pH9?14)で青色になることは重要です。
例えば、「リトマス試験紙に酸性雨をつければ何色になるか?」と問われる可能性もありますが、ちょっと複雑です。pH5?5.6であれば紫色といえますが、一つの色を選択すれば、総じて赤色と答えることになります。
BTB溶液については、生物分野で頻出なので、生物分野での酸性雨問題のところでお話します。