中学受験生の親御さんに
どうしてもお伝えしたいこと

 このコーナーでは、中学受験に臨まれる生徒さんの親御さんに「どうしてもお伝えしたいこと」を書かせて頂きたいと思います。時に耳が痛い内容の場合もあるかもしれません。しかし、その全てが毎年受験を経験しているプロ家庭教師の立場から、お子さんが中学受験で合格を勝ち取るために「どうしてもお伝えしたいこと」なので、ぜひ読んで参考にして頂ければと思います。

2009.05.23
中学受験は心を育てなければ勝ち抜けない

今回は中学受験での「心」の問題をお伝えします。古い道徳の授業のようで、あまりピンとこない方々が多いかと思われます。あえて極論とすれば、「生徒さんの心を育てることをおろそかにしていると、秋以降に成績を伸ばすことが急に難しくなる」といった内容です。

中学受験は戦いであり、「心」などと生ぬるいことを言っていては勝ち抜けない、とお考えの方も多くいらっしゃるでしょう。確かに受験は戦いの要素があり、中学側も心の優しい生徒さんを優先して合格させるのではなく、あくまで点数で合否を判定します。であれば、「心」の中身が未成熟でも、今は目をつぶって、塾に預けて点数を取るテクニックを固めることが先、心は中学に入ってからゆっくりと育てればよい、とお考えになるかもしれません。

あえて申し上げれば、そうしたテクニックだけで合格できる学校もあります。ただし、ある程度以上の偏差値の学校を望まれるのであれば、そうした考えは一刻も早く捨てることをお勧めします。特に国語において、中学受験の問題は、中学校が巧妙に作った面接問題であるとも言えます。一見して普通の問題でも、採点する側は生徒さんの人間性を見極めています。具体例は後に触れるとして、中学側は「心」の面でも、ある段階を超えた生徒さんを求めていることに留意して頂きたいのです。

それに対して現実としては、あまりに学校が求める生徒像とかけはなれた生徒さんの姿を見ることが、残念ながら頻繁にあります。 まずはその実例からお話します。

1.マナーについて、いくつかのケース

平日の午後9時ごろ、東急線のある駅でこんな風景を見ました。駅の構内に小学5、6年生の男子の一群がすさまじい騒ぎ声とともに駆け込んできます。時間として、会社帰りの人々で多少混み合う時間です。ちょうど電車の乗り換えのタイミングでもあり、多くの人がホームへと向かって行きます。そこへ先の一群がなだれ込み、さらに追いかけっこを始めました。興じた彼らはカバンを振り回し、周りの人ごみなど気にする様子もなく駆け回ります。当然カバンは会社帰りの男性や女性に当たり続け、よけようとしてよろめくご老人までいる始末です。カバンを当てられた側が、あまりに急なことで訳もわからず呆然とする中、当の男子達は大声で笑いながら、駆け込み乗車をして行きました。嵐の過ぎ去った後に、ある女子高生達が顔をしかめて「また○○の生徒だよ」と、ある大手塾の名前をつぶやいていました。

また、別の日、同じ駅から電車に乗っていると、先の一群とは別の集団がなだれ込んで来ました。今度は手にフライドポテト。車内に充満する匂いと、彼らの騒ぎ声に多くの人々が視線を送る中、彼らは優先席を占拠して、そのまま騒ぎ、あたりにポテトをばらまき始めました。あまりの傍若無人ぶりに見かねた男性が「少し静に」と声をかけたところ、明らかに注意され慣れていない彼らは、視線を宙に舞わせ、不快感をにじませる表情で固まりました。その彼らが下車時にとった行動は何か。注意をした男性に一斉に罵声を浴びせかけて、逃げるように大笑いしながらまたホームを駆けて行ったのです。

この駅には多くの大手塾があります。先の彼ら以外にも、バスに割り込み乗車をする生徒、そのバスの中でやはりポテトをあさりあう生徒、言い出せばきりがないくらいに騒動は挙がります。そして、こうした騒動を繰り返しているのは男子だけではありません。女子も時にはそれ以上に騒ぎまわります。

こうしたこともあって、駅近辺の店舗からある大手塾に苦情が殺到し、一時期は塾の職員が駅までの帰り道に数人配置されたそうです。ほとぼりが冷めたと判断されたのか、今ではそうした職員を見ることはありません。

こうした事例はどこの駅でも実際に起きていることでしょうが、果たして許されることなのでしょうか。親御さんの中には、「ストレス解消なのだから」「少しくらい羽目を外す時間も必要」と思われる方も多くいらっしゃるでしょう。また、それ以上にご自身のお子様がそうした行動に加担されているとは思われない方が多くいらっしゃるかと思われます。もちろん生徒さんはご自分から「電車にポテトをばらまいてきた」とは言わないでしょう。一方ご家庭でも、「塾の勉強はどうだった」と聞くことがあっても、「帰り道で人に迷惑かけなかったか」と聞かれるケースはまずないかと思われます。

2.中学受験国語の文章

それでは、そのような行動をしてしまうことと、成績が伸びなくなることに、どのような相関関係があると言えるのでしょうか。

まずひとつは、入試で出される文章内容の観点から指摘することができます。端的な例を挙げますと、神奈川女子の最難関のフェリス女学院、あるいは毎年高い人気が集まる立教女学院などは、「道徳心」や「他者への思いやり」を重視した内容をテーマとした文章が非常に多く出されます。また、その他の学校についても、例えば麻布の物語文が一見読みやすいながらも心情の変化について深い洞察を求めている点や、桜蔭の論説文が大学受験で出題されても不思議のないような文化・文芸論であったりする点などを見ても、小学校6年生としては、ある程度の精神的な成熟度を持った生徒さんでないと太刀打ちできない文章を中学側が出してくることが伺えます。そうした傾向は最難関校に限ったことではありません。偏差値50から55の学校についても、国語の出題文をぜひご覧になってみて下さい。深遠なテーマを出題する学校がいかに多いかがおわかり頂けるかと思われます。こうした文章は、もちろん塾などで同種のテーマを何度も読むことによって慣れをもって対応できることはあります。ただし、テーマの僅かな部分だけでも自分自身の体験や考えに触れているかどうかで、読む深さ、記述表現の厚みには格段の違いが生まれます。その違いを学校側は巧妙に確かめていると言えます。

心を育てることの重要性と受験対策の相関関係のもう1点は、この「記述を中心とした学校からの出題内容」にあります。基本的に中学受験の記述問題は、出題文の内容をどれだけ適確に把握できているかを、字数などの制限がある中で表現する力を問うものが主流です。ところがそうした中で、「自らの経験を元に答えよ」といった指示のついた記述問題が出題されることがあります。

いくつかの例を以下に挙げてみます。

【開成中】平成20年度:息子を戦死させた母親の心情と生き方を扱った文章からの最終問、「あなたが、人の人生や経験を知って、頭を下げたい気持ちになったときのことを、思い出して書いて下さい。どんな人に対して、どのような気持ちになったのか、説明しながら120字以内で書くこと」

【浅野中】平成19年度:現代文化への批判を込めた論説文からの最終問、 「『どうやら謙虚さがなくなると、人間でも機械でも何でも、わがままになってしまうようである』というところを読んで、あなたは何を感じ、何を考えましたか。自分の見聞きした経験や、本で読んだことなどを参考にしながら、85字以上100字以内で、あなたの考えたことを書きなさい」

【暁星中】平成16年度:あさのあつこの『バッテリー』からの最終問、 「『マウンドで、ぜんぜんストライクが入らないとき』について、これと同じような君自身の経験を具体的に教えて下さい」

【光塩女子】平成19年度第1回:大江健三郎の文章を素にして、「これから中学校に入り、新たな場所で学ぶことになるあなたは学校へ行く理由をどのように考えますか」※この問題などは、まさに面接諮問そのものです。

【同 上】平成19年度第2回:「あなたが後世に残していきたいと思う日本語を一つ挙げ、その理由を100字以内で書きなさい」

こうした記述問題について、塾ではもちろん対策が行われます。何度も演習をすることで、書くテクニックは習得できますし、中学側も何を書いたか、といった内容以上に、出題意図に確実に応えているか、正確な表現がなされているか、誤字脱字がないか、といった点を重視します。つまりは、生徒さん自身が本当に考えていないことでも、確実なテクニックを習得していれば問題に対応できるといった極論も成り立ちます。それは完全に否定はできないことです。ただし、生徒さんは問題を見るまで、何が聞かれるか全くわかりません。限られた時間の中で自らの体験を問われた際に、パターン化された疑似体験から選び出す作業と、本当に体験したことを綴るのでは、どちらが早く精度の高い解答を書けるかは明らかかと思われます。

また、企業の採用面接とも通じますが、採点側はプロです。これまで数多くの答案を見て来ましたし、また何百もの答案を一気に採点するのですから、おのずと生徒さんの書いた内容が作られた経験か、真実の経験かは、即時に判断されます。他の要素で全く差がつかなかった場合、最後は内容で合否が判断されることも可能性としてはないとは言えません。

少しでも多くの体験をし、そこで他者の心の痛みや立場、絶対に守るべき社会常識の存在を知ることは、どうしても必要になります。

電車の優先席で近くにご老人が立っているにも関わらず、集団で席を陣取り、強烈な匂いの発する食べ物をあさりあい、携帯電話をかけたり大声で騒ぎまわる生徒さんの姿と、開成の問題を照らし合わせて見て下さい。

「開成は受けないから関係ない」とお考えの方々もいるかと思われます。ただし、最難関校で出された問題が下位校でアレンジされることが算数では多く見られるように、科目を問わず最難関校は問題のスタンダードを作り上げます。下位校でいつ開成と同じ趣旨の記述問題が出されないとも限らないのです。

普段の生活でどれだけマナーや礼儀、守るべき常識を認識するかが、受験の国語を解くうえでの礎を作ることができるかどうかにかかっていることを徹底的に見直して下さい。

3.直前期の孤独との戦い

心の問題は、入試問題との関わりだけではありません。生徒さん自身が、入試直前になって、しっかりと自分を支えられるかどうかにも関わってきます。

秋が過ぎて志望校選定の公開模試も回数を重ねてくると、どの生徒さんにとっても受験が具体的なものとして近づいてきます。こうした余裕のない時期に差し掛かってからは、生徒さんの戦う相手は「自分自身」になります。ここからが孤独を極める戦いです。親御さんは懸命にバックアップをされますし、塾も盛んに励ましの声を生徒さんに投げかけます。そうした支えが生徒さんを奮い立たせることは間違いありませんが、それでも最後は「自分自身」です。一人で机に向かい、一人で問題を考える時などに襲ってくる不安と焦りに打ち勝つことができるのは生徒さん自身の力だけです。

先に挙げたマナーや礼節を欠いた行動に共通していることは、集団で動いていることです。いじめも同じことかもしれませんが、周りに流されて何となく楽しむうちに行動がエスカレートしてしまっている現象とも思われます。いずれにせよ、「こうした行動をとって周りに迷惑がかからないのか」といった自問自答ができない生徒さんが、入試直前期に孤独な自分との戦いに打ち勝つだけの「自分自身」を持つことができるでしょうか。春先から「ストレス解消」と言って駅で暴れまわる生徒さんは、直前期の本当のストレスに襲われた時に、どのように解消するのでしょうか。夏休み前に付き合ってくれた友達は、もう一緒には暴れてはくれません。「自分自身」を持たない生徒さんが入試直前に自分を失ってしまった時に、それを支えられるのは親御さん達だけです。その状況の厳しさが壮絶なものであることには覚悟しなければなりません。中にはストレスから体調を崩して、受験を断念しなければならない生徒さんもいます。

最後に待っている自分との戦い、その戦いに勝つためには、日常から必要最低限の孤独には慣れておくこと、自分との会話で正しい判断をする練習を重ねておくことが不可欠になります。

4.二人三脚で

このように、中学受験に臨むにあたっては、心を育てることが極めて重要で、それを怠っていたがために、生徒さんが自分を失ってしまうと、秋から直前期にかけて、生徒さんは自分の内面まで食い込んでくるような過去問に対応できず、また心のバランスを失うことで勉強になかなか手がつかなくなることもあります。それを回避するための対策を講じられるのは御家族の方々だけです。塾は生徒さんの安全を守ることには対応できても、帰り道のすべてにまで目を行き届かせ、周りに迷惑をかけていないかどうかまで確かめることは不可能です。それは塾の本分ではありません。また私共も、具体的にどのようにして心を培うか、までは踏み込むことはできません。それぞれのご家庭の方針に抵触することは私共の本分ではありません。

中学受験は生徒さんと御家族の二人三脚で進むものです。そこでは、ぜひ生徒さんの心の面にも目を向けて下さい。いますべきことを後回しにしてしまうと、その影響が秋以降の厳しい戦いの際に出ることを、どうか心に留めておいて下さい。

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