2010.07.23 配信
絶対に役立つ中学受験専門プロ家庭教師からの必勝アドバイス!
社会の説明問題、まとまった記述を自分の言葉で書けますか?
いよいよ夏休みです。小6の皆さんは、志望校選びや学校別対策にも目を向けながら、今までに培ってきた基礎学力が受験本番に向けてより実践的なものとなるよう、みがきをかけていく季節です。学校によっては、社会のテストでも自分の言葉でまとまった記述をしなければならない説明問題が出題されることがあります。今日は、こうした社会の説明問題について考えていきたいと思います。
[1]どのようなタイプの問題があるか
ひとくちに説明問題といっても、問い方により、様々なタイプの問題があります。
(A)知識を問う問題
問題例)「(日英同盟に関して)なぜ、日本はイギリスと同盟を結ぶ必要があったのですか。」(2010学習院中第1回)
ほかにも「弥生時代の環濠集落から想像される当時の社会状況とは」「過疎化するとどのような困ったことが起きるか」「ヒートアイランド現象とは何か」「屋敷森とは何か。屋敷森がみられる地域の気候の特色を述べ、説明しなさい」「『地方自治は民主主義の学校』という言葉はどのようなことを言っているか」というように、問われうる内容も多岐にわたっており、最も一般的な出題方式です。自分が大体理解できるというだけでなく、採点者にわかるような言葉で解答文としてきちんとつづれるよう、準備しておく必要があります。
(B)具体性の高い資料等を提示し、説明させる問題
歴史的史料、データ、地勢図、現代の社会事象等に関する文章、写真など、具体性の高い材料を与えて説明させる問題です。問われている内容に関する知識を持っているからといって、必ずしも説明を思いつくことができるとは限らず、問題で提示された具体的事実や資料・データ等と、自分の知っている内容とを関連させられることが必要です。
問題例)「自衛隊の記念行事などがおこなわれる会場などでは、そこに集まっている自衛隊員は全員、制服を着ているのに対して、ともに参加している総理大臣や防衛大臣は制服を着ていません。その理由を説明しなさい。」(2010頌栄女子)
憲法に規定されている文民統制(シビリアンコントロール)についての知識は中学入試の社会では王道的な学習内容で多くの受験生が持っているものです。その知識を、問題中で語られている事実と結びつけて考えることができるかが解答の分かれ目になってきます。
(C)推測する力や、社会の内容に関する発展的な思考力を必要とする問題
教科学習や日常の生活体験、読書やニュース報道等による思考の経験を生かして、初めて出会う内容や事象に対して、十分に考えたり妥当な推測をしたりすることができるかどうかを試す問題です。問いの主旨や問題の前提を正しく理解することも重要です。
問題例)「(筆者注;以下は筆者による問題要旨です。)ある市でゴミの減量化をめざして、収集を有料化するという条例を作った。ゴミの収集は指定ゴミ袋のみで行い、そのゴミ袋は表の通りに実施される。表を見て、この市がゴミの量を減らすうえでどんなことに気をつけているのか、二つ書きなさい。……※表には、この市における年間のゴミ袋の価格が記されている。1人世帯では80枚まで、2〜5人世帯では100枚まで、6人以上世帯では110枚までのゴミ袋を1枚6円で購入できる。そして、いずれの人数の世帯も、いま述べた規定の枚数を超えたあとのゴミ袋は1枚300円で購入するという内容である。」(平成20麻布中)
解答のポイントの一点は、一定の枚数を過ぎた分のゴミ袋は高い価格で購入させ、各世帯から出るゴミの量が一定量以下におさえられるよう工夫されていることです。もう一点は、人数の多い世帯でゴミ袋代の経済的負担が大きくなることへ配慮をし、世帯間の経済格差の軽減につとめていることでしょう。後者の解答ポイントを子供に指摘させるということは、一見するととても難しいように思われますが、中学入試の社会には、「消費税は、贅沢品といえないような食料等の生活必需品にも、誰にでも同じ率でかかるため低所得者に厳しいものとなってしまう」「所得格差を軽減するために、所得に応じて税率を変える累進課税制が取り入れられている」といった内容があります。これらの内容を覚えていくときに、単なる暗記ではなく、「経済格差に配慮する」という考え方をより具体的に生き生きとイメージしながら学んでいた受験生ほど、試験当日に発想しやすい問題であったのではないでしょうか。学んだ内容がそのまま出題される問題ではないものの日常の学習内容の中に解答を考える足掛かりがひそんでいた問題であるともいえるでしょう。
(D)賛否や自由意見を書かせるなど、自分の考えや立場を述べさせる問題。
問題例)「現在、日本は少子高齢化社会になり人口が減少しています。海外から日本への移民について、あなたの考えを書きなさい。」(平成21年 田園調布学園中 第1回)
自由に解答が書ける問題であっても、フィーリングや漠然とした好みで結論づけるのでは解答文としては不十分です。自分の立場を述べる際に、その根拠が社会科の発想でしっかり書けているかどうかも採点のポイントとなります。Dタイプの問題が社会で出題されることは多くはありませんが、志望校で過去に出題された場合など注意が必要です。
[2]どのような対策をしていくか
まず、近年の過去問をさかのぼって、志望校で過去に説明問題が出題されたかどうかを、見ておくと良いでしょう。過去に出題されていた場合は、それがどのようなタイプの問題であるか、解答字数を確認しましょう。来春の入試の出題傾向に関しては、学校説明会で得られる情報が手掛かりになることも多くあります。
説明問題にかぎらず、用語は正しく漢字で書けるようにしておくことも大切です。多くの中学校の入試において、小学校の学習漢字以外の字であっても用語に誤字があると減点もしくはバツになってしまいます。学ぶべき漢字の用語の数は大変多いので、出来るだけ早くからコツコツ取組むことが大切です。
説明問題で問われる内容の多くは、定評のある中学受験向けのテキストであれば、どこかに関連することが書いてあることがほとんどです。太字で強調されている重要語の部分だけでなく、テキスト内の注やコラム、図や口絵に小さな活字で付された説明にいたるまで、隅々にまで目を配り、覚えこんでいくことが重要です。その際、先に述べましたように、自分の生活体験にひきつけたり具体例等を思い浮かべたりしながら、根底からの理解をしていくことが、試験当日に学んだ内容を連想できるかどうかの決め手ともなります。そして、模擬試験や問題集で説明問題として一度問われた部分は、ほかのテストでも出題される可能性が高い部分ですので、要注意です。
[3]最後に、テキストを学んでいく際に、特に注意すべきポイントを挙げてみます。
- (1)因果関係や影響関係、ねらい(目的)を記述している部分に注意する。一つの事象がそうなる原因、メカニズムを説明している部分にも注意する。 例)「日本へ輸出する海老を養殖するため、タイのマングローブ林が伐採され、環境が破壊されている。」
- (2)長所と短所が考えられるような内容に注意する。
例)「二大政党制の長所と短所」「民営化の長所と、心配される点」 - (3)共通点があるが違いもあるような複数の事がらの違いを明確にできるよう注意する。
例)「聖徳太子は隋と対等に外交しようとしたが、足利義満は明が上の立場であるという形で貿易を行った」「明治時代に生まれた近代の郵便制度と江戸時代の飛脚のちがい」 - (4)今後心配されることや社会問題、その対策に注意する。
例)「少子高齢化社会で心配されることと、少子化を食い止めるための対策」 - (5)異なる立場、意見を持つ人々のそれぞれの言い分を説明できるよう注意する。
例)「温暖化対策の温室効果ガス削減に関して食い違う、先進国と発展途上国の主張」
テキスト中の、説明問題で問われそうな部分や、過去に説明問題で問われた部分には、青いペンでカッコをつけるなどし、他の部分と区別し強調しておくと、いつものテキストが説明問題対策の有効な参考書になるはずです。お子様にこの青カッコがついている部分を引き出すような質問を投げかけてあげ、口頭で説明してもらうという練習をするのも良い方法です。口頭による説明は、書くより気軽に取り組めますが、お子様が説明する様子を目の当たりにすることもできますし、お子様ご自身が「他の人に理解させるような客観的な説明とは何か」ということを身をもって感じていくきっかけともなります。このとき、もし答えに詰まってしまうようであれば、解答の中からキーワードを抜き出して与えるなどして補助してあげ、ステップを作って誘導していきます。口頭でうまく説明できるようになれば、次なる「書く」というステップまで、あともう少しです。
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