2008.03.28配信
絶対に役立つ中学受験専門プロ家庭教師からの必勝アドバイス!
『国語の問題の解き方(1)気持ちの公式』
春休みに入りました。まとまった時間を利用して、これまで手が回らなかっ た分野や、苦手分野の復習など、じっくり勉強されていることかと思います。 しかし、苦手分野を学習する場合、なかなか思うように問題が解けないこと が多いのではないでしょうか。たとえば、国語が苦手な場合、「問題をどのよ うに考えればいいのかわからない」「人物の気持ちなんて、答えはひとつでは ないはずだ」とお悩みの方も多いのではないかと思います。国語の問題は、な んとなく読んで、なんとなく解いていても、0点にはなりません。ですから、 「どこがわからないのかわからない」のが国語の特徴です。
しかし、国語の問題であっても、人間が作った問題である以上、そこには 「解き方」が存在します。そして、「解き方」をマスターすれば、成績は必ず 上昇するのです。
そこで今回は、国語の問題の「解き方」を、実際に文章を引用しながらご説 明したいと思います。
国語の問題の解き方(1)〜気持ちの公式〜
気持ちの公式 「場面+言動=気持ち」
気持ちを考える場合、場面と言動をしっかりと読み取れれば正解できます。 「場面」とは、「いつ、だれが、どこで、どうした」という物語の基本的な情 報です。「言動」とは、せりふ(心のなかで言ったことも含む)や行動、表情 のことです。この「場面」と「言動」をあわせて考えることで、人物の気持ち を客観的に読み取ることができます。
たとえば、「泣く」ということから、すぐに「悲しい気持ち」と答えてしま ってはいけません。「中学に合格した+泣く」だったらどんな気持ちになりま すか。うれしい気持ちですね。このように、「場面」を読み取らなければ、そ れが「うれし涙」なのか「くやし涙」なのか、それとも単純に悲しくて泣いて いるのかわからないのです。
では、この公式を使って、実際の問題を解いてみましょう。
次の文章は、有島武郎「一房の葡萄」の一場面です。 「僕」は、ジムの持っている絵具がどうしても欲しくなって、誰もいない昼休 みに、絵具をこっそり盗んでしまいます。そのことが級友にばれて、問いただ される場面です。
「君はジムの絵具を持っているだろう。ここに出したまえ。」 そういってその生徒は僕の前に大きくひろげた手をつき出しました。そうい われると僕はかえって心が落着いて、 「そんなもの、僕持ってやしない。」と、ついでたらめをいってしまいました。 そうすると三、四人の友達と一緒に僕のそばに来ていたジムが、 「僕は昼休みの前にちゃんと絵具箱を調べておいたんだよ。一つもなくなって はいなかったんだよ。そして昼休みが済んだら二つなくなっていたんだよ。そ して休みの時間に教場にいたのは君だけじゃないか。」と少し言葉を震わしな がら言いかえしました。
僕はもう駄目だと思うと、急に頭の中に血が流れこんで来て、顔が真っ赤に なったようでした。すると誰だったか、そこに立っていた一人がいきなり僕の ポッケットに手をさし込もうとしました。僕は一生懸命にそうはさせまいとし ましたけれども、多勢に無勢でとてもかないません。僕のポッケットの中から は、見る見るマーブル球(今のビー球のことです)や鉛のメンコなどと一緒に、 二つの絵具のかたまりがつかみ出されてしまいました。「それ見ろ」といわん ばかりの顔をして、子供達は憎らしそうに僕の顔をにらみつけました。僕の体 はひとりでにぶるぶる震えて、眼の前が真っ暗になるようでした。いいお天気 なのに、みんな休み時間を面白そうに遊びまわっているのに、僕だけは本当に 心からしおれてしまいました。あんなことをなぜしてしまったんだろう。取り かえしのつかないことになってしまった。もう僕は駄目だ。そんなに思うと、 弱虫だった僕はさびしく悲しくなってきて、しくしくと泣き出してしまいまし た。
問題
「眼の前が真っ暗になるようでした」とありますが、このときの「僕」 の気持ちを説明しなさい。
さて、みなさんなら、この問題をどのように解きますか?
自分を主人公に置き換えて、「自分だったら、こんなふうににらめつけられ ると、腹が立つなあ」とか、「お母さんに怒られるのが怖い」とか、考える人 もいるかもしれません。しかし、それでは完全な正解にはなりません。
「自分を主人公に置き換える」という解き方では、正解になることもありま すが、不正解になることも多いのです。なぜなら、国語の問題は「この文章か らは、どのような気持ちだと読み取れますか」という問題であり、「あなたな らどんな気持ちになりますか」という問題ではないからです。
では、公式を使ってみます。
- 場面・・・僕がジムの絵具を盗んだことがばれた(取りかえしがつかない)。
- 言動・・・体がぶるぶる震えて、目の前が真っ暗になる
僕はもう駄目だ。
盗んだことがばれた場面です。「もう駄目だ」と思って体が震えているので すから、罪悪感に責められ、「取りかえしがつかない」と絶望的な気持ちにな っていることがうかがえます。このように、「場面」や「言動」から、気持ち を客観的に推測するようにすると、正解率は飛躍的に向上します。
模範解答
(例)ジムの絵具を盗んだことをみんなに知られ、取りかえしのつかないこ とになったと思い絶望している。
中学入試でも「気持ち」を問う問題は、たいへんよく出題されます。中学校 側の“他人の気持ちを理解できる生徒に入学して欲しい”という意図が反映さ れているのかもしれません。
ここでご紹介した「気持ちの公式」は、問題を解く上で非常に有効ですが、 使いこなすにはやはり生徒さんが自分自身で考える必要があります。人の気持 ちが、完全に機械的な作業で、わかるようになるわけではありません。
ですから、他人の気持ちについて関心をもち、想像力を働かせる訓練を怠ら ないようにしてください。そのような訓練として、この春休みにぜひご家庭で、 人物の気持ちについて考える機会をお持ちになることをお勧めします。映画や ドラマでもかまいませんから、話し合いの時間が持てると非常に有効であると 思います。
国語の偏差値は、算数と比べると上げるのに時間がかかる科目ですが、逆に、 いったん上がると算数のように乱高下せず安定します。安定して得点が取れる ということは、試験本番の一発勝負の中学受験ではとても重要なことです。国 語の勉強に少しでも、不安があるようでしたら、いつでも中学受験鉄人会の中 学受験専門プロ家庭教師にお任せください!