第一志望校と併願校の入試の違い
いよいよ2009年の中学入試が始まりました。1月入試が地元で本命の受験校という志願者もいますし、本命校受験の前に経験を積むという受験生もいるでしょう。いきおい応募倍率は高くなり大勢の受験生が押しかけることになります。
入試問題の傾向が似通っているとか校風が近いということで、第一志望者が集中する学校とその志願者たちが多く受験する併願校というのがあります。この両者の入試についてどのような違いがあるのかを考えてみたいと思います。
■ 第一志望校と併願校 偏差値の比較
2008年度の四谷大塚の入試データを見てみましょう。 四谷大塚入試情報センターというホームページに、「入試結果グラフ」という項目があります。ここをクリックすると、主な学校について入試直前の合不合テストと入試結果が偏差値でグラフ化されています。さらに合格者の内で実際に進学した生徒がどのくらいいたかも分かるようになっています。
男子女子の最難関校と併願校について比較してみました。
合格者の合不合判定テスト合格可能性と偏差値 四谷大塚2008年度入試結果
男子 | 80% | 50% | 20% |
---|---|---|---|
渋谷幕張 | 66 | 63 | 59 |
開成 | 70 | 66 | 62 |
女子 | 80% | 50% | 20% |
---|---|---|---|
浦和明の星 | 65 | 61 | 56 |
桜蔭 | 70 | 66 | 60 |
80%というのはその偏差値以上あれば受験生の8割が合格するものであり、50%と20%も同様です。50%偏差値に対する80%と20%偏差値を比べると、+3〜4、-4〜5とほぼ同じ範囲が合格しています。これは併願校だから同じパターンになっているわけではなく、実は多くの学校で±5の範囲が80%〜20%偏差値となっているのです。本稿の主旨とははずれますが、四谷大塚の合不合判定テストの偏差値より5下の学校を受験すれば、かなり合格の可能性が高いと言うことになりますね。
では合格者ではなく実際の進学者はどのような偏差値分布になっているのでしょうか。
進学者の合不合判定テストでの偏差値
男子 | 最高 | 最低 |
---|---|---|
渋谷幕張 | 71 | 52 |
開成 | 75 | 57 |
女子 | 最高 | 最低 |
---|---|---|
渋谷幕張 | 70 | 53 |
開成 | 77 | 60 |
最高と最低の差は、渋谷幕張19で開成18、浦和明の星17で桜蔭17でほとんど差がありません。この4校については合格者だけでなく進学者も分布としては変わらないことになります。ちなみに他の学校について調べたところでは、進学者の偏差値の差は学校によりかなりバラつきがあります。
■ 違いは進学者の偏差値に出る
第一志望校が集まる入試日なのか、併願受験生と第一志望校の2回目受験生が重なるのか、安全校として選ばれやすい学校なのかなど、こちらの方が学校ごとに特徴が出るようです。さて、四谷大塚の偏差値分布グラフに戻ります。第一志望校と併願校にどこか違いはないのでしょうか。合格者と進学者の割合を見てみると、第一志望校は合格者の偏差値分布と進学者の分布は相似なのに対して、併願校では進学者の分布の中心が偏差値で下方にシフトしています。
これは考えてみれば当然のことです。というのは併願校の合格者が第一志望に合格すればそちらに進学するので、成績上位の生徒から抜けていくためです。入試結果で使われる偏差値は実際に入学する生徒の平均よりも高めになっていると考えられるのです。
多数の生徒が受験する模試を行っているテスト会が、進学者の偏差値を発表するようになったら、中学入試に大きな衝撃を与えるかも知れません。というのは併願校の偏差値が今より下がる可能性が高いからです。もっとも試験日が複数になり、しかも同一試験日に午後入試が行われる現状では、一つのテストで偏差値により学校の序列をつけること自体に無理があるのと思われますが。
このほかにも受験生の偏差値分布から、この生徒は最難関校に合格する力を持ちながら、別の学校を選んだのだろうなとか、あくまで第一志望にこだわり無謀な受験をしているなとか、受験生の背景が読み取れることがあります。受験スタイルが浮き上がってくるのです。
単に一つの数字で表される偏差値よりも、このようなグラフの方がたくさんの情報を含んでいます。皆さんも志望校の偏差値分布グラフをながめて、そこから様々なことを読み取り、お子さんの受験の参考にしてみてはいかがでしょうか。