併願校を見直すなら今
■子どもにとって通う中学・高校は環境そのもの
立冬を過ぎて冬の気配が忍び寄る季節になれば、中学受験生も志望校はかなり固まってきていることでしょう。入試が迫ってくると志望校の選定は、塾の偏差値と入試日程の表を見ながらということになります。あまり細かいことを考えていられないというのが、受験生の保護者の方々の実感でしょう。
ところで私自身は自分の子の受験の結果、4つの学校を実際に見聞きしています。そこで感じることは、入学後の方がずっと長いということです。入試の準備期間は長いように思うのですが、入学後6年間通う学校の方が時間も長く、かつどっぷりと浸かるので濃い時間を過ごすわけです。
そこへ通う子どもにとっては学校という環境が大きな影響を与えます。入試の志望順位はどうあれ、元気に楽しく通えるかどうかが鍵となります。兄弟でも子どもの性格は異なっています。そして通う中学も全てカラーが異なっています。そこに集まってくる子ども、その家庭はこんなにも違うものかと学校行事の際に感じます。
でもそれは当然のことなのです。スクールカラーというものがあり、それを受け入れて受験するわけですから。例えば生活面やしつけに厳しいと表明している学校に、自由で伸び伸びした校風に憧れる子どもを入れようとはしないでしょう。
しかも思春期から青年期に向かう子どもは親離れして、友だち主体の生活に移っていきます。友だちから受ける影響は小学生の時代に比べ何倍も大きいのです。
■スクールカラーを見落とすな
公立の中学校は集まる生徒、その家庭も様々です。進学志向の親がいるかと思えば家業を継いで欲しいという親もいるでしょう。スクールカラーというものはできにくく、その年度ごとに異なる顔を見せることもあります。
一方私学では「質実剛健を旨とする」とか「自調自考の態度を養う」というような建学の理念があります。質実剛健で旧制高校のようなバンカラなスタイルの学校に、都会的スマートな生徒が志望してくることはあり得ないですね。
建学の理念の他にも学費の違いもあります。学費の安い学校はどちらかと言えば質素な家庭が多く集まります。そうした学校で派手な生活をしている子どもは浮いてしまうかも知れません。
わが子達は幸いにしてスクールカラーにうまくフィットしているので、どの子も学校が大好きです(でした)。でも知人の中には入学してから「こんなはずではなかった」とこぼしている人もいます。
伝統の名門校に入ったのは良いけれど、高校へ進む頃には大部分が塾に通いバリバリ受験勉強を始めて、授業中に内職(塾の宿題)をしているという話も聞きます。何をしに高校へ行っているのか分からないと主流からはずれてしまう子も。
■偏差値は人気投票
おそらく感覚的には8割の生徒が自分の通っている学校に満足しているようです。でも2割は不満を抱えたり、違和感を抱きながら通っていると思われます。その原因は「偏差値信仰」によるもの。
応募倍率が高くなると合格確実圏の数値が上がり偏差値は高くなります。一種の人気投票だと言ってもいいでしょう。これが何年か続くとその学校の評価として定着して、合格可能性の低い受験生が敬遠するようになり、応募者が減っても偏差値は高止まりしたままとなります。
学力の高い受験生が集まった結果として大学合格実績も上がり、名実共に偏差値が定着するわけです。この偏差値に基づいて受験指導もなされ、受験生も実力と同等かより高い偏差値の学校を志向するようになります。
受験生にとって偏差値が実力を下回る学校を受験することは、プライドを傷つけるような気がするのでしょう。しかしながら、学年の人数が少ない小規模校で進学実績を出している学校があっても、目立たないため倍率はそれほどでもなく、偏差値もそれほど高くない学校があります。あるいは偏差値表では下の方でも充実した語学教育に力を入れていて、使える英語が身に付く学校もあります。
ブランド力の弱い学校には探せばお買い得な学校があるのです。そうした学校の中で自分の子どもに合ったスクールカラーの学校を見つけて、併願校に加えてみてはどうでしょうか。特に学力として合格安全圏にこんな学校を併願しておけば、安心して第一志望、第二志望校の受験に取り組むことができます。
■併願校を見直すなら今
過去のわが家の中学受験の経験では、この時期には6〜7校の併願校を選んでいました。その際にどうしても偏差値と受験日の一覧表を眺めることになります。すると学校の顔がどこかへ行ってしまい、表の中で受験可能な学校ならどこでも選択してしまいそうになります。
候補を絞るのはそれでも構いません。しかしながら、ピックアップした学校は必ず受験案内やホームページでチェックして下さい。お子さんに向いているのかどうか。まだ説明会に参加可能なら是非出かけてチェックして下さい。
塾の言いなりではなく、「この学校なら通わせても良い」という学校を合格可能性80%の学校から少なくとも1校は見つけておきましょう。入試本番は何が起きるか分かりません。頑張っているお子さんのためにも、「備えあれば憂いなし」の精神で準備されることをお願いします。