オリンピックと中学受験
今年2008年の夏、北京オリンピック開催の真っ最中です。メダルを獲る選手、思わぬところで敗れてしまう選手。そこには数々のドラマがあります。様々なアスリート達が競技で活躍する姿を見ていると、中学受験との共通点に思い当たります。それは次のような点です。
■オリンピックは何年間かの総決算
1年前に競技を始めていきなり代表に選ばれてオリンピックの舞台に立つということはあり得ないわけで、4年ではなくもっと以前から競技の世界に入り、努力してきた人達が活躍する場なのです。しかも、どんなに実力があっても本番で力を発揮できなければメダルに手は届きません。中学受験も同じで、幼児期から準備を始める人もいれば、4年生から始める人もあるでしょう。少なくとも3年間は準備をして、一発勝負の試験に臨むのです。
本番で最高のコンディションを作り上げて、実力を発揮した選手が表彰台に上がれるのです。トリノ冬季オリンピック金メダリストの荒川静香選手がこう話していました。「本番で100%の力を発揮できることはありませんでした。だから練習では120%を目指さなくてはならないのです」プレッシャーのかかる本番で実力を発揮するには、多少のミスがあっても取り返せるだけの技術を身につけておくように努力するという意味です。
幸いにして中学入試はオリンピックの表彰台ほど狭き門ではありません。また受験校も1校しか受けられないわけでもありません。けれどもチャンスはそう多くはないので、事前にしっかり準備を怠らないようにという教訓を生かすべきです。
■天才は人一倍努力する
スポーツでも芸術でも「天才」と呼ばれる人がいます。しかし彼らは練習をさぼっても実力を発揮できるわけではないのです。卓球の福原愛選手やゴルフのタイガーウッズ選手は、プロになる前から人一倍練習して来ました。福原愛選手の1000本ラリーやタイガーウッズ選手の100本連続パットは有名です。
模試で常にトップレベルをとる子どもが自分から人一倍勉強をしていた例を知っています。またピアノ教室で飛びぬけて上手な子は、人一倍時間をかけて練習していました。彼らは勉強や練習が好きなのです。長時間やってもくじけません。嫌だと思っても負けず嫌いで続けるという側面もあるでしょう。しかし決して投げ出さない人達なのです。
中学受験も多くの受験生が限られた椅子を巡って競い合うわけです。周りが努力しているなら自分も負けてはいられません。そこに早く気づいたほうが勝ちです。
■アスリートは基本に忠実
水泳の北島選手はアテネオリンピックで金メダルを獲った後に、さらなる進化のために上半身の強化に努めたそうです。腕で水を掻く力が足で水をける力に比べ弱かったので。自分の弱点を見つけたら筋力トレーニングという基本からやり直し、いきなりフォームをいじるのではなく段階的にフォームを作り上げていく。こうした姿勢が北京での金メダルにつながりました。
受験勉強でもまずは基礎・基本をしっかり身につけることです。基本問題の解き方をしっかり理解して、自分で解けるまで練習する。あるいは基礎知識についてはパーフェクトに近くなるまで覚える必要があります。知識が穴だらけで応用問題が解けるはずがありません。難しい問題ができないと焦ってしまう気持ちはわかります。効果がすぐには出てこなくても、基礎・基本をしっかり身につければ、かならず実力が付いてきます。
■アスリートはコーチと二人三脚
北島選手と平井コーチのように、名選手の影には有能なコーチが存在します。アスリートが試合に集中できるように、フィジカル（身体）やメンタル（精神）をしっかりサポートします。練習メニューも一緒につくり、コンディション作りを選手と一緒に行うのです。
中学受験ではコーチは塾や家庭教師の先生と保護者です。先生は技術を教えてくれるテクニカルコーチで、コンディション作りを担うのが保護者です。保護者はトレーナーでもあり、カウンセラーの役割も兼ねる重要なコーチです。
保護者がコーチをする場合に注意しなくてはならないのは感情的になってしまうこと。「どうしてできないの！」と言ってしまっては身も蓋もありません。感情が爆発しそうになったら一旦その場を離れて落ち着くまで待ちましょう。感情のレベルを下げてから子どもと向き合えば頭ごなしに怒鳴ってしまうことはなくなります。
コーチが選手を信じなくては本番でよい結果は残せません。子どもを信じて常に励ましながら入試本番に向かって行きましょう！
