学習が習慣となる環境を作る
あなたの周りにこういう人はいないだろうか。一家や親族が医療従事者ばかりだったり東大出身者ばかりだったりする人。御三家中学などで学者一家や医者一家の師弟は珍しくない。こうした場合、「やっぱり遺伝ね」と簡単に納得してしまいがち。わたし自身もそうだった。しかし、最近ではどうも違うのではないかと感じるようになった。
その理由はこうだ。わが家には1人の大学院生がいる。これが半端ではなく勉強している。ゼミ形式の授業のために大量の本や参考文献を読んで、自分の考えをレポートにまとめて持って行かなくてはならない。毎晩遅くまで翌日の授業の準備に余念がない。だが長時間勉強するようになったのはつい最近のことではない。いつ頃からかというと、高校3年の大学受験態勢に入った頃からだ。志望が難関大学のさらに難しい学部だったということもあるし、将来の進路も見据えてということもあったのだろう。それ以降ずっとほとんど毎日勉強している。このように家の中に勉強する習慣を身につけた人間がいると、年下の兄弟姉妹に影響する。まず、第一に必要な時以外はテレビを見なくなる。勉強中の兄弟の邪魔をしないためだ。さらに、親から言われなくても勉強するようになる。兄弟の後を追うようになるためだ。
つまり家庭学習することが当たり前に感じられ、自然と勉強するようになる。こうなってくると成績も自然と上がってくる。先の学者一家でも同じなのではないだろうか。周りに触発されて勉強するようになった、その結果として「あそこの家は頭が良い血筋だ」と言われるわけだ。わが家の場合は下の兄弟が将来どんな進路に進むかはまだ分からない。だから子ども達が学者一家を成せるかどうかは不明だ。しかし、少なくとも下の子が上の子の背中を見て勉強するようになっているし、進路もかなり具体性をもって思い描いている。親が「勉強しろ」と口うるさく言う必要がなく、あまり構ってやる機会もない。順調にはかどっているかと、時々様子を見ているだけだ。家族に勉強家が一人いるおかげで親はとても楽だ。
では、そんな兄弟や親戚がいなかったらどうしたらいいだろう?やはり親が手本を示す他はないではないか。子どもの前で本を読むなり、何かの勉強を始めてみてはいかが。実際に親が勉強する姿を子どもが真似をして成績が伸びた例がある。いつもテストで鳴かず飛ばずの点数だった子どもがいた。親が資格取得を思い立ち毎日子どもの目の前で勉強していたら、子どもが側で勉強するようになり、テストの点数もぐっと伸びたそうだ。
子どもの学習に対する姿勢は家庭環境に影響される面が大きい。子どもが勉強しないといられないような環境を作ると、ひとりでにやるようになる。中学受験に成功した子どもの多くが、「リビングで勉強していた」と答えているので、子ども部屋に押し込むのではなく家族の中で勉強しやすい環境を整えることを意識されるようにしたい。
そして中学受験勉強で培った家庭学習の習慣は、高校から大学へ至るまで生きるものなのだ。現在の就職事情でも、ただ大学を出たということは企業にとって重要ではなくなってきている。個々の学生がどれだけ力があるかが問われる。勉強以外にセールスポイントがあれば構わないが、そうでなければしっかり勉強しておく方が良いだろう。そのためにもしっかり学習習慣を身につけておきたいものだ。