中学選びは友人選び
中学受験に際して志望校選択はどうしても偏差値を物差しにしてしまいがちだ。しかし実際に進学した生徒に聞くと、最も重要なポイントは「友人」であることがわかる。
学校は思春期を過ごす環境ではあるが、その最大の影響は先生よりも友人から与えられる。そして、中高一貫校の場合は多感な6年間を過ごすのだから、一生の友達となる可能性がある。そこまではいかなくても、周囲の影響は大きなものがあるだろう。クラス全体で真面目に勉強する雰囲気があれば、子どもは勉強することに抵抗がなくなるだろうし、その逆で遊びがちになってしまうこともある。
したがって志望校を選択するということは、友達を選ぶことに等しいと言っても過言ではない。こうした視点から学校を見ると、説明会で受けたのとは違った印象を受けることもあるだろう。あるミッション系の男子校の父母の話を聞いたことがある。中学生にはある程度の制約があるのだが、私服のため高校生の影響を受けてだんだん崩れてくる。服装の乱れは生活の乱れで、勉強や生活がルーズになりはじめたそうだ。こんなはずではなかったのにと嘆いていた。
友達選びの視点から学校を見る
では、どんな点に注意して志望校を選べばよいのだろうか。
そのポイントを考えてみよう。
■ 在校生の登下校風景
以前に私が、わが子の受験のために学校見学した際にこんな経験がある。そこは最寄り駅まではバス便を使う必要があった。説明会の帰りにバスを待っていた時のこと。私と同じ何人かの見学者が待っていたが、そこへその学校の高校生が集団でやってきて同じようにバス停に並んだ。ところがそこへバスが到着すると、列を乱して我が先にと乗り込もうとする。始発駅ではないので既に乗客がある。全員乗れないかも知れないというのが、彼らにはわかるのだろう。しかしこのようなルールも守れない生徒ばかりの学校にわが子を通わせるのには疑問を感じた。
学校にいる間はある程度自制心が働くかも知れないが、校門を出ると地が出てしまうものだ。学校の外へ出て気がゆるむ、下校時の様子を見るのが生徒の素顔を知るには良い手段だ。さらには先に述べたように、中学生では真面目だが高校では乱れてくる場合もあるので、高校生の様子も見ておくと良い。
■ 学校行事
体育祭や文化祭といった学校行事は普段の生徒と違う面を見ることができる。男子校で全力を出し合って盛り上がる学校もあれば、リハーサルもしておらず段取りが悪くて、何をやっているのかわからない学校もある。
ここで見るべきは行事の完成度の素晴らしさではなくて、「どの程度生徒の自主性に任されているか」を見るべきだ。学校が管理して素晴らしい行事になるのは、ある意味で当たり前だ。自主的運営で完成度が高ければ、生徒の質が高いと言うことになる。
今風に言うと「ユルイ」、つまりだらしないように見えても、先生の側もそれを認めて運営させているのならば、それはそれで面白い学校と言える。わが子がこの集団の中に溶け込んでやっていけるかどうかという視点で見ればいいのである。
■ 説明会
学校説明会は志願者が集まる場であるから、在校生ほどではなくても学校毎にカラーが出る場合がある。周りを見回して、違和感のない保護者かどうかを見極めよう。参加している保護者とお付き合いできそうであれば、子どもも一緒にやっていけるに違いない。また子どもが参加できる説明会では、集まってくる子ども達にも視線を向けよう。その子達が友達として遊びに来ても受け入れられそうか、そんな目で見てみるといいだろう。
■ 入試当日
入試当日は周囲を見る余裕はないかも知れない。しかし、実際の受験生が集まってくる。もし入学したら同級生になるかも知れない子達で、しかも親子がそろっている。親は冷静さを残してよく観察しておきたい。小学校入試と違い、付き添い役の親の服装にも幅があるはず。「T.P.Oをわきまえているか」、「派手すぎないか」、「自分が浮いていないか」チェックするといいだろう。 注意して欲しいのは、今どきの中高生がどんなものなのかを知った上で、志望校の生徒を観察した方が良いということだ。
多かれ少なかれだらしなかったりする時期ではある。特に男子校ではより顕著かも知れない。男の子とはそうした傾向がある。女子でもファッションやアクセサリーに興味が出てくる年頃だ。小学生と単純に比べてはいけない。そのためには普通の中高生を普段から観察して、一般的には彼らの年頃はどんな様子なのかも知っておきたい。
このように学校へ行く機会では全て観察眼を働かせて、わが子の友達を含めた環境を選ぶという意識でいて欲しい。偏差値では見えない学校の姿に気づくに違いない。