公立中高一貫校という選択
■公立中高一貫校とは
国の第16期中央教育審議会の答申以降、公立の中高一貫校が急速に増えている。20年の4月では約80の併設型の中高一貫校および中等教育学校がある。最終的には全国で500校の設置を計画している。併設型一貫校と中等教育学校の違いは、中学卒業→高校入学という形をとるか、とらないかにある。また多くの併設型一貫校では定員の一部について高校で生徒募集がある。
2008年中学入試でも首都圏で国立を除く公立中高一貫校の応募者が1万5千人近くに上った。2009年度入試でも首都圏で、群馬に1校、神奈川に2校の中等教育学校の新設が予定されているので、さらに公立中高一貫校志願者は増えるであろう。
参考までに都内の中高一貫校をリストアップしておく。
- 都立白鴎高等学校附属中学校・都立白鴎高等学校
- 都立小石川中等教育学校
- 都立桜修館中等教育学校
- 千代田区立九段中等教育学校
- 都立両国高等学校附属中学校・都立両国高等学校
- 都立立川国際中等教育学校
- 都立武蔵高等学校附属中学校・都立武蔵高等学校
- 平成22年度は中野、練馬、八王子、三鷹で新規開校を予定
■公立中高一貫校人気の背景
なぜそれほど公立中高一貫校が人気なのだろうか。それには公立中学校が置かれた今の状況を知る必要がある。かつて公立高校の入試は「十五の春は試練」とされていた。それも少子化と共に緩和され、人気校を除くとかなり入りやすくなった。同様に大学入試も受験地獄はいつの時代のことかと思うほど広き門となり、定員割れの大学も相次いでいる。
すると何が起こっただろうか。あまり勉強しなくても高校から大学へと進学できるようになったのだ。こうして子供たちの勉強への意欲も低下し、今や中学生の約3割がほとんど家で勉強しなくなっている。（ベネッセ2004年第１回子ども生活実態基本調査報告書による）
こうしたことから、子どもの教育に関心の高い家庭は私立の中高一貫校受験をするようになり、少子化に反して中学受験率が上がっている。しかしながら私学には多額の教育費がかかる。それでこれまで中学受験をためらっていた家庭が、公立中高一貫校に目を向けたのだ。これまでも国立大学付属中学はあったが、地理的に遠かったり、私立中学並みの受験勉強が必要だったりして、こうした家庭からは受験の対象として見られていなかった。
ところが最近開校した公立中高一貫校は、幸か不幸か教育の機会均等に配慮するというタテマエから、入学試験ではなく適性検査という学校独自の選抜方法をとるため、私立中学受験層と大きく重なることはない。しかもそのカリキュラムはほとんどの学校が、しっかりした学力を付けるという方針を示しているため、私立の中堅校に見劣りしない。なによりも実績作りが重要な開校初期は、学校と自治体が一体となってサポートすることが期待できる。
そして中高一貫であることのメリットとして、高校受験をする必要がない。受験勉強のかわりにクラブ活動に打ち込むこともできるし、高校受験のための内申書を意識して萎縮する必要もない。このメリットは私学と同様に享受することができる。
■適性検査の内容
適性検査という側面から見てみると、私立の中堅校の受験者は公立中高一貫校も志望校に加えることはあるものの、初めから公立中高一貫校を第一志望として受験する生徒が十分勝負できる検査だという点も、こうした新しい受験生を引き付けている。
というのは適性検査の内容が私立中学の入試問題ほど細かい学習知識を必要とせず、基礎的な学力や資料を読み解く力、あるいは自分の考えを表現する力など、総合学習的な知的能力を試す問題が多く見られるからだ。また試験科目そのものが算国理社といった教科別の試験となっていない。現在の私立中学入試は勉強させすぎと感じる保護者にも共感を呼ぶ内容になっている。それから多くの学校で作文を科しているため、短時間である程度の量の文章を書き上げる力が求められる。
その適性検査だが、学校によっては10倍以上の応募倍率となっていて、かなりな狭き門ではある。また入試日が統一されていて併願ができないという難点がある。それでも、これまでと違った中学受験のチャンスが増えたと捉え、公立中高一貫校受験という選択も考えてみる価値があると思う。
