子どもを勉強嫌いにする10の方法
2月は受験生交代の時期にあたる。受験生である小学6年生は塾を去り、5年生が新6年として来年の入試に向けた取り組みをスタートする。また新4年生として現3年生が新たに入塾先を探し始め、入試報告会などへ足を運ぶ。
中学受験は親がさせるものだ。子どもが自ら国公立および私立の中高一貫校を受験したいと言い出すことはほとんどない。したがって本人は気が進まないうちに受験生活が始まってしまう。すると勉強から気をそらす物事はたくさんあり、場合によっては勉強そのものが嫌いになり、受験も上手くいかなくなってしまう。
子どもに対する親の接し方によっては、益々子どもの勉強嫌いに拍車をかけてしまいかねない。そこで子どもを勉強嫌いにしてしまうポイントを10個取り上げてみたい。
1.子ども部屋にテレビやゲームを置く
子ども部屋に専用のテレビやテレビゲームを置いていないだろうか。意思の弱い子は「勉強しなくては」と思っても、誘惑に勝てずテレビを見たり、ゲームで遊んでしまうだろう。今まではそれでよかったが、受験体制に入ったら子ども部屋からテレビを片付けよう。ゲームボーイやDSなどの携帯ゲームも子ども自身の管理から、親の管理へと移した方が良い。女子はゲームを我慢することができやすいが、男子はそうもいかない。親が子どもに渡して30分〜1時間くらいで時間を指定して渡し、終わったら回収するようにして、遊び過ぎないようにコントロールしよう。
2.無理矢理塾通いさせる
西洋のことわざで「馬を水場まで連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」というのがある。塾に入れたからと言って勉強するとは限らない。親の勧めで中学受験させるにせよ、塾に入って勉強することを本人が納得する必要がある。そうでなければ入塾してからの勉強がはかどらない。そのためには、親がなぜ中学受験させたいと思っているのかを、一度きちんと話してやる必要がある。4年生くらいでは親の話にどこまでついてこられるかわからないが、親が正面から自分に向かってくれていると感じることが大切だ。できれば、複数の塾を一緒に見学したり、体験授業を受けたりして子どもと相談して決められると、本人の納得度も高まって良い。
3.気が向いた時間に夕食にする
受験というのはスポーツでいうとオリンピックのようなもの。長い間準備をして短い期間の本番にかけるわけだから、計画的に準備することが重要だ。長期の計画を実現するには、毎日の生活も規則正しくする必要がある。勉強を含めた生活のリズムができたら、受験準備の半分は成功したようなものだ。それなのに食事の時間が日によって変わるということは、生活のリズムが一定しないということにつながる。すると勉強時間も固定しないので、なかなか勉強もはかどらなくなる。起床、食事、学習、入浴、睡眠がリズミカルに回るように親が心がけてやりたい。
4.顔を見たら「勉強しなさい」と言う
受験生活に入ると、子どもが暇そうにしていると気になるもの。「そんな時間があるなら勉強してくれたらいいのに」と思ってしまうのも無理はない。しかし、ご自身がお子さんの年齢のときを思い出してほしい。自分が子どもと同じように毎日勉強できただろうか。子どもにとっては勉強の負担は大きい。それを分かってやることも大事だ。その日どこまで勉強するのか(塾の宿題の量)を確認して、それがこなせそうなら、多少のゆとり時間は大目に見てやろう。逆に子どもの顔を見るたびに「勉強した?」「勉強しないの?」「遊んでばっかりいて」などと小言を言い続けていると、子どもは益々やる気をなくすものだ。「よくやってるね」と声をかけてやれば、親の期待に応えようとしてくれるに違いない。
5.子どもが宿題をやっている時にテレビを見る。
子どもを勉強部屋に押しやって、家族は居間でバラエティを見て笑っていたのでは、受験生のやる気をそぐことになる。少なくとも勉強時間帯は家の者もテレビを自粛するなどの協力が必要だ。見たい番組は録画しておき、子どもが塾に言っている間に見ればよい。特に兄弟がいる場合は難しいと思うが、家族みんなが応援していると受験生が感じられるようにしてほしい。4,5年のうちから3年間続けるのは難しくても、せめて受験生となる6年生の1年間は家族も我慢すべき。
6.友達と比較する
「○○ちゃんは夜の12時過ぎまで一生懸命勉強するんだって」と子どもの友達や知り合いを引き合いに出して、比較するのは避けたほうがよい。子どもは他人と比較されることをとても嫌う。とくにできる子と比較されるのは辛い。塾で配布される順位表も同じだ。「○○ちゃんは×番なのに、あんたはこんなに下じゃないの。塾に入った頃は同じ位だったでしょ」などと言わなくても本人は分かっている。それなのに友達と比較されると、やる気を失ってしまうだろう。子ども本人の努力が不足していたなら、その点を指摘するにとどめればよい。単に批判しても進歩しないので、どこが悪かったのか、どの点を改めたら良いのかが具体的行動に結び付けられなければ改善は望めない。親がその点をつかめなければ、塾の先生に相談して勉強方法の改善を図るほうがずっと建設的ではないだろうか。
7.「だからあんたはダメなのよ」としょっちゅうけなす
できる子と比較はしなくても、何かの結果が出るたびに子どもをけなしてはいないだろうか。勉強でも芸術でもスポーツでも、伸びる子はほめられて伸びている。もちろん無条件に手放しでほめるのもどうかと思うが、少しでも努力する姿が見えたらすかさずほめてやりたい。大人でもほめられて悪い気はしないのだから。10のうち6つか7つほめて、残りを批判にあてる。また順序もまず先にほめて、後から「けれどもこの点は〜」とまずい点を指摘する。「ほめるところなんかない!」と思うかも知れないが、「字がていねいに書けた」「計算ミスをしなかった」でも構わない。
筆者も自分の子でほめることの大切さを実感した。その子は算数が好きでないために、苦手意識があった。基本問題でも嫌いな分野では、問題にとりかかるまえから嫌そうな顔をしている。だから問題を読んでも、どこから手をつけていいかわからない。そんな子でも、少し条件を整理させてみると塾で習った公式を思い出し、当てはめて解けることがある。すかさず「できたじゃない!やったね」と声をかけてやると、うれしそうな顔をして次の問題に、自分からとりかかろうとする。
こういうことを繰り返す内に、難問でも投げ出さずに粘り強く考え続けるようになり、以前は15分くらいしか集中できなかった算数を、2時間以上続けて勉強するようになった。
8.成績が伸びないのは先生の教え方が悪い
これは7とは逆のパターン。「あなたの成績が伸びないのは、先生の教え方が悪いのよ。あなたのせいじゃないわ」と全面的に塾や家庭教師の先生のせいにする。こういう人は先生と衝突して、ころころと転塾するパターンが多い。子どもは機械ではないので、専門家が教えたら必ずできるようになるわけではない。成績が伸びないのには理由があり、それは先生側にもあるかも知れないが、家庭や子ども本人にもあるかも知れない。
最初から「うちの子は悪くない」と決め付けていては改善は望めない。そして「先生が悪い」と子どもに言い続けていると、子どもが先生を信頼しなくなり、言うことを聞かずに勉強する意欲が低下する。先生がダメだと言いながらその先生に教わり続けるのは苦痛だろう。この道のプロをないがしろにせず、謙虚に耳を傾ける姿勢が必要だ。
9.思い出したように問題集を買い与える
これは父親が陥りやすい行動だ。普段はあまり子どもの受験に関わっていないのに、知人などの成功例を聞いて、「この本で○○中学に受かったんだって。お前もやってみろ」と突然問題集や参考書を買ってくる。受験勉強には一定の流れがあって、そのペースを乱してはいけないことなどお構いなし。やらずに放っておくと不機嫌になる。父親がこんなことをしていたら、子どもは嫌になってしまうだろう。教材や学習内容には口を出さず、「頑張っているな」と一言声をかける方がずっと子どもを勇気付けることを知ってほしい。
10.子どもの話をいい加減に聞いてあしらう
中学受験勉強をしていると、子どもに世の中のことを考える目が育ってくる。すると色々なことに興味がわいて、大人の話にも首を突っ込んでくる。それを「こどもは黙っていろ」と一喝したり、「ああ、そうね。ふーん」と真剣に聞かず、鼻先であしらってはいけない。最近の入試問題には、「省エネを進めるのに役に立つ方法を考えて書きなさい」というような問題も出される。こうした記述問題にはおとなとの会話が役に立つ。「これ、あの時お父さんと話した」と試験場で思い出すかもしれない。
子どもが大人ときちんと議論できる環境のあるフィンランドはOECDの学力到達度調査で1位をとっている。子どもとじっくり話すのは塾よりも家庭の方が機会が多い。子どもが話をするときは、家事の手を休めて、真剣に聞いてやりたいものだ。