ーAll About受験ガイド高橋公英さんー
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PISA学力到達度調査で日本大幅学力低下ってほんと?

 読者の皆さん、こんにちは。今回は固いテーマなので反対にくだけたスタイルで書こうと思います。

 OECD(経済協力開発機構)が2006年に実施した学力到達度調査、いわゆるPISA2006の結果がテレビや新聞で報じられました。皆さんもご覧になったことでしょう。多くは「日本はまた学力が低下した!大変だ!」という論調が多数派です。でも、これは結果のランキングのみにこだわって、報告書の中身を読んでいない人が書いているものです。問題の本質はそこではないと思います。では、どこが問題なのでしょうか?その点を検討する前に、ここでも調査の概要と結果をまとめておくことにします。

【PISA2006調査結果】

 PISAはThe Programme for International Student Assessmentの略で、日本語では学習到達度調査と訳されています。毎回重点分野を決めて特にその分野での学問的リテラシーを詳しく調査しています。2006年は科学的リテラシーに着目しました。ところでPISA調査は、普通イメージする学力テストとは出題意図が異なっていて、社会に出た時にいかに役に立つ知識と運用力を身につけているかを調査する問題形式がとられています。もちろん基本的な知識を見る部分もありますが、これはかなり易しいものです。

 さて、その結果は次の通りです。

  • ・ 科学的リテラシーは2003年2位から2006年6位
  • ・ 読解力は2003年14位から2006年15位
  • ・ 数学的リテラシーは2003年6位から10位

 科学的リテラシーと数学的リテラシーで大きく順位を下げたということが、始めに書いた報道の元になった事実です。確かに順位の低下は問題ですが、他のG8先進諸国ではカナダしかベスト10に顔を出していないことを考えれば、それほど問題とは思えません。最大のノーベル賞科学者輩出国のアメリカが科学的リテラシーで29位ということを考えれば、順位に目を奪われていては本当の課題を見過ごすことになりそうです。

【子ども達の学力向上のために何をしたら良いのか】

 アンヘル・グリア経済協力開発機構 事務総長が日本記者クラブで行ったスピーチで次のように述べています。「科学的証拠を用いる能力、つまり知識を再現し、証拠を解釈することにより、結論を導き、その基礎となる論拠を特定する能力の評価では、日本の生徒はきわめて良い成績を収めている。それとは対照的に、科学的な疑問を認識すること、つまり科学的に探ることができる問題を認識し、科学的探求に必要な要素を見つけ出すとう課題では、日本の生徒は苦労している。つまり、日本の生徒は、初めて出会う状況で、知識を応用する必要がある場合、困難に直面するということである」

 つまり理科や科学として学習したことがらは良くできるけれども、身近な事象と科学を結びつけることが不得意だということです。最近もこれと同じようなことを学校の先生と話しました。今の子ども達は学習した知識が断片化していて、それらを組み合わせて答えを導くことができないそうです。そしてそれはすべての教科に渡っているということです。正にこの点がリテラシー=運用力の部分で、どうやら子ども達にとって知識が実体験の裏付けを持っていない絵空事のような感覚なのです。これは成績上位の生徒についても言えることではないでしょうか。

 前述の先生は「学校だけでは解決出来ない」とおっしゃってました。家庭での生活、子どもとの接し方も大いに影響しています。OECD事務局長はこうも言っています。「私が言いたいのは教育政策は我々の子供たちを成功に導く基礎を与えるものでなくてならない、ということだ。成功に導く学習経験は学校、家庭、その他どこでも起こりえる。それを正しく行うためには、システムがどのように動いているのかに関して深く理解する必要がある。PISA 調査は今手元にある成果を高めるためのツールの一つ」 つまり、PISA調査は子ども達に起こっていることを知るための道具で、その結果をどう活かすかは学校と家庭を含めた大人達にかかっているということです。

 学問的リテラシーを高めるためには、子ども達にできる限り本物を見せて触れさせる機会を多く作ることです。これは理科だけでなく、社会で言えば色々な土地へ行くことです。様々な人と関わり合い、暮らしを見ることです。また勉強を一緒にする際には答えを誘導するのではなく、子どもと共に試行錯誤して思考の過程を見せてやることです。大人だから間違って恥ずかしいのではなく、間違いながら正解へたどり着く方法を示してやるといいでしょう。

 間もなくやってくる中学入試問題には、PISA調査を上回る良問がたくさん含まれています。こうした新しい傾向の入試問題にも通用する学力は、子どもに教え込む学習ではなく、引き出す学習が効果的です。大人が変わって子ども達を変えて行けるようにしたいものです。

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