ーAll About受験ガイド高橋公英さんー
わが子を合格に導くヒントとテクニック

親が子どもの勉強を見る際に注意したいこと。

【親は勉強を見るな】

 多くの塾では「親は勉強を教えないで下さい」と言うはず。それは親が子どもだったときと今では解き方が違うので当然だ。塾での教え方と異なる方法で覚えると、授業に支障が出る。家庭教師についている場合、先生はもちろんこの点を心得ていて「この塾はどんな解法で教えているのかな」と予めテキストを見て教えてくれる。だから安心して任せられるわけだ。これまでも親の役割はペースメーカーやプロデューサーに徹するように書いてきた。とは言うものの、塾の勉強は予習と復習で毎日やらなくてはならないし、家庭教師を毎日呼んでいるという家は少ない。特に高学年では課題のボリュームが増す。そこで親の出番も増えてくる。

 では親が子どもの勉強を見るにあたっては、どのような注意が必要だろうか。

【教えすぎないようにし、導いてやる】

 例えば算数や理科。問題を読んでとっかかりがないらしく白紙の状態。そこでそばについて、親が式を子どもに書かせて行く。このようなやり方は子どもが解いているのではなく、親が解いているので身につかない。教えすぎの状態といえる。塾関係者の言うとおり、このように親がつきっきりで勉強を見ていると子どもの自主性が損なわれて成績が伸びないことが多い。ではどのようにすればよいのか。まずは以前も書いたが問題文を声に出して読ませる。黙読では見たそばから忘れることがあっても、声に出すとポイントは残るものだ。その際に大事なところ(キーワード)にアンダーラインを引きながら読ませるとよい。

 斎藤孝の「三色ボールペンで読む日本語」という本があるが、算数の場合は赤一色で十分だ。国語で三色(「客観的に重要な部分は「赤」、次の重要な部分は「青」、主観的に大事と思う点は「緑」)使うと効果がありそうだ。ポイントに線を引きながら読むという意識を持っただけで、問題文への集中力が高まる。このように問題に取り組めば、前提条件と操作と求めたい値が浮かび上がってくる。そこで、図でも表でもいいから最初がどうで、途中はどう変化し最後はどうなったかが明らかになる。(操作の前後で変わる量と変わらない量に注目するのは理科でも同じ)

 条件の整理の仕方を教えてやって、式を立てるのはできるかぎり自分でやらせるようにしたい。どうしてもわからなければ先生に聞けばいいのだから、難しい問題は途中で打ち切って次の問題へ進めよう。 例えば算数で「X円で仕入れた品物を20%の利益を見込んで定価をつけたが、売れ残ったので3割引で売ったらいくらのもうけがあったでしょうか」という問題なら『X円で仕入れ』『20%の利益』『定価』『3割引』『もうけ』にアンダーラインが引ける。テキストを見ると「定価=仕入れ値+利益」の式が出ている。そこで「定価の意味は知っている?」とたずねれば上の式を子どもは指すだろう。「じゃあ、この問題でわかってないものを出していこうか。」とキーワードが既知の値かどうか確かめて、未知な値なら求めるようにうながしていけば解けるはず。

【感情的にならない】

 親が勉強を教える際に最も注意しなくてはならないのがこの点だ。確かに「どうしてこんなこともわからないのか?」と思うこともある。「ばっかじゃないの!」と言いたくなることもある。しかし、それを口にしてしまうと子どものやる気を削ぐので、ぐっとこらえて飲み込むようにしよう。わからないのには理由があるはずだから。つまらない勘違いだったり、問題の読み違いだったりすることも多い。 どの教科でも先ほどの音読をまずさせてみて、テキストに載っていなかったかチェックさせる。(テキストの解説を読まずにいきなり問題を解き出す子どもも結構多い)

 それでもわからず怒り出したい気持ちが収まらなければ、とりあえずその場を離れる。つまずくポイントは塾や家庭教師の先生に任せればよい。5年生の後半を過ぎた子どもが取り組んでいる問題をよく見て欲しい。「小学生がこんな問題をやっているのは、考えてみればすごいこと」と思うだろう。どの学年でも1年前に比べるとずっと難しい問題をやっているはず。素直に「1年でこんな問題をやるようになってすごいね」と言ってやろう。

 問題集やプリントを捨てずにとっておき積み重ねて子どもに見せるという保護者がいた。それだけの量をやったというのを目で見ることが自信になるという。親は教科の内容を教えるより、子どものモチベーションを維持し高めることを心がけるべきだろう詳しくは「中学受験 親の役割」とその続編を読んで頂きたい。

 子どもが自力で考えても分からなければ解答と解説を読ませ、解法を読んでも分からないときに助け船を出してやり、それでも解決しなければ専門家に任せよう。親が完璧を期待しては子どもにプレッシャーを与えてしまう。できない問題をできないままにしないように導いてやりたい。

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