小1から始める中学受験
小学校入学時点で将来の進学を考えた場合に、どのような準備をしたら良いのか考えてみましょう。その答えの一つが中学受験になるのかどうか、受験するしないに関わらずやっておくべきことはないのか検討してみます。
【塾は必要か?】
各種調査にもあるように、保護者のゆとり教育に対する不審感は大きく低学年からの通塾が増えています。ここでは「中学受験」の観点から考えてみましょう。
低学年用の教科書はご存知のようにとても薄くなっています。ー方で、中学入試で必要な基礎・基本はあまりかわっていません。
したがって何らかの手段でこのギャップを埋めなくてはなりません。ですが、それは塾へ通うしかないのでしょうか?
その答えを探すために、あなたが中学受験塾の経営者だったらどのようなカリキュラムを組むか考えてみましょう。
入試の傾向
- ・中学入試問題のレベルはそれほど下がっていない。
- ・細かな知識よりも考える力を試す問題が増えている。
- ・記述問題も増えている。
- ・少子化なのに受験生は増加している。
入塾してくる子ども
- ・学校の授業で学習する内容は削減されている。
- ・基本の習得が不十分な子が多い。
- ・読解力が落ちている。
- ・家庭学習の習慣が身についていない。
このように塾の入り口と入試という出口のギャップを埋めなくてはならないのです。基本ができている子どもであれば、十年以上前と同様に5年生からの受験体制でも入試に間に合うでしょう。
とすると、5,6年生のカリキュラムは従来通りにして、低学年で基礎・基本を習得させるようにしようとするのではないでしょうか。
結論。
基礎・基本力を付けることができれば、塾に通うことなく家庭でも十分対応することができます。低学年の基本問題は教えるのに難しいテクニックはあまり必要ではないということもあります。市販教材を上手く組み合わせて家庭で学習する習慣ができれば高学年で受験体制に入っても十分やっていけます。また、中学受験しなくても学力の向上が期待できます。
それでは基礎・基本の勉強法について考えてみましょう。
【読み書きそろばん・読み書き】
まずは学力の基本である「読み書きそろばん」の「読み書き」から。ひらがな・カタカナは小学校入学時点で読めるのが望ましいですね。絵が多いとはいえ教科書は文字で書かれているのですから。
50音は読めるけれど、文章はたどたどしいという場合があります。そんな時は単語読みで文字の固まりを読めるようにしましょう。一文字ずつ拾い読みしていると、意味の把握がしにくいので。
また日記をつけるのも効果的です。書くことで読む方も同時に進歩します。始めは短い文章でいいのです。3行程度の日記をつけてみてはどうでしょうか。
小学校で習う漢字は学習指導要領で1006字です。中学入試ではこれで十分とは言えませんが、全てマスターできれば受験勉強に取り掛かってから残りを補っても間に合います。低学年向け児童漢検というのがありますから、初10級:小1修了程度 ひらがな・カタカナ学習漢字80字、初9級:小2修了程度 学習漢字240字というのを目指して問題集に取り組むのもお薦めです。
そのまま漢検8級(小3程度)、7級(同小4)と進んで行くことで実際の学年に縛られず学習することができます。ちなみに我が家の小4の娘は現在5級(小6程度)で次回4級受験を目指しています。
公立学校の先生は、小学校3年生の漢字書き取りでつまずく子が多いと感じています。その理由は
- ・他の教科の時間数が増え国語の時間が減ること。
- ・画数の多い漢字が増えること。
- ・新出漢字数も増えること。
- ・身近な感じから抽象的な概念を表す漢字に変わっていくこと。(例:「安心」「世界」「幸福」など)
等によるものと考えられています。
以上のことからこの学習時間の不足を家庭で補う必要が出てくることが、おわかり頂けるでしょう。
【読み書きそろばん・そろばん】
文字通りのそろばんというのもいいですが、とにかく計算力を養いましょう。今は学校での計算練習が十分に行われない時代です。
100マス計算プリントが何種類も売られていますので、これを使われてもいいでしょう。ただし、ある程度の根気が必要です。計算量が思ったよりも多いのと、繰り返しやって目標完成時間に達するまで行うので、子どもによっては飽きてしまうからです。
ここまでしなくても、市販の計算ドリルを毎日決まった枚数続けて消化していく方法でも十分役に立つと思います。学年にとらわれず、徐々にステップアップしていく教材を選ばれると長く使えて良いと思います。
繰り上がり・繰り下がりのある足し算引き算や、桁数の多いかけ算わり算など発展的内容とされてしまった計算を中心に。計算順序を入れ替えて間違いにくくする習慣は早い内につけたいのですが、低学年では真面目に頭から順にやる子どもが多いものです。無理して入れ替えてやらせるより、本人が納得できるやり方でいいでしょう。
【読解力が決め手】
低学年の学習は言語能力の差が大きく出ます。なぜなら国語以外の教科も文字によって学習していくからです。だから読書の習慣をつけることは大きなアドバンテージになるのです。
子どもを本嫌いにするのは簡単です。例えば
- ・漫画を読むことを禁止する。
- ・読む本を親が決める。
- ・30分以上読むことを強要する。
この内どれか1つを実行すれば、直ぐに嫌になってしまいます。「マンガばっかり読んでいないで本でも読みなさい!」「また、そんな本を持ってきてぇ。こっちの世界名作童話の方がためになるよ。」「もう終わり?根気がないねぇ。それじゃ読み終わるのはいつになるかわかんないね。」などと口走ったが最後です。
日本の子ども(大学生も含む)の読解力は、ストーリー性の高いコミックによるものだという説もあるくらいですから、マンガもバカにしたものでもありません。マンガの他に活字だけの本を加えて読むのでいいのです。
たまに書店に立ち寄って好きな本を買ってやろうという話になりますね。その際についためになる本を買ってやりたいと親は思うもの。しかし、子どもが持ってくる本は名作とはほど遠いというのが普通です。
そうしたら、「好きな本を買ってやる。」といった手前、文句を言わず買ってやります。ついでにもう1冊これならという本(できるだけ読んで面白そうなもの)も、併せて買って与えれば、きっと読んでくれるに違いありません。
また、読み方のスタイルには口を出さないようにしましょう。少しずつでも継続的に読むことが大事です。寝る前に読み聞かせをしてやるのもいいですよ。幼児の内はしていたのに、小学生になると止めてしまうのはもったいないことです。自分ではスラスラ読めなくても、お話しの面白さに惹かれてその内自分でも読んでみたいと思ってくれれば大成功です。
これまで述べたように、低学年では「読み・書き・そろばん」の基礎を確実に身につけることを中心に家庭学習の習慣を身につけましょう。中学受験する、しないに関わらず、この基礎・基本は必ずその後の学習の基礎になります。