ーAll About受験ガイド高橋公英さんー
わが子を合格に導くヒントとテクニック

学校選びが受験の成否を決める!

 どの受験生のお宅でも、小6の夏休みくらいまでは「うちの子も御三家に入れるかも?」という夢を持っているかも知れません。しかし大手進学教室の模擬テストを受験し合格可能性の数値を目にし、夢から現実に立ち返ります。

 第一志望は変えずとも「第二志望は?」「滑り止めはどうしよう?」と、今まで真剣に考えたことがなかった学校も検討し始めます。

 では、その際にどんな学校を選んだらよいのでしょうか?

【家庭の方針をしっかり決める】

 学校を選ぶ際はまず方針を決めます。例えば

  • ・大学受験するのかしないのか。
  • ・男子校・女子校か共学校か。
  • ・しっかり勉強させる学校か、自分で勉強する学校か。
  • ・礼儀作法にうるさい学校か、そうでない学校か。
  • ・宗教教育の有無。

などです。

 よくある間違いは、まず偏差値でいくつかの学校をピックアップして、その中から通学時間を考慮して決めてしまうというものです。

 私の知り合いにはせっかく受験して入学しても、窮屈さが嫌になり途中で公立中に転校してしまった人がいます。その子の性格を考えると、入学した学校は確かに合わないだろうと思えるところでした。

 ですから方針を決めて、それに合う学校をピックアップしてから偏差値表を見るようにします。

 では上記のポイントを具体的にチェックしてみましょう。

◆大学受験するのかしないのか

 これはつまり

  • A.大学附属校を選び系列大学へ進学する。
  • B.高校までの学校か、大学附属だが外部受験しやすい学校を選ぶ。

のどちらかということです。

 Aは中学入試を経た後は伸び伸びと学校生活が送れるということであり、Bは大学進学時に自分の進路を改めて選択する可能性が広いということになります。

 メリットはデメリットにもなり、Aは12歳である程度将来が決まってしまう(系列大学に全ての学部学科があるとは限らない)ことになり、Bは大学受験勉強をする必要があります。

 また、Aでも希望する学部に入るためには一生懸命勉強しなくてはならない学校もありますし、さぼっていて留年したり中途退学することになってしまったりします。

 Bでは私立中高に通いながら塾にも通い、せっかくのゆとりがなくなってしまうこともあり得ます。

◆男子校・女子校か共学校か

 見過ごされがちですが、これは重要なポイントです。多感な時期を同性だけで過ごすのか異性のいる環境で過ごすのかは、子どもの性質によって向き不向きが違うからです。しかも悩みはそれだけに留まりません。進学実績を重視すると男女別学の学校の方が選択肢が多いということなのです。共学を選ぶと選択肢が縮まってしまいます。

 私の長女は女の子だけの人間関係は嫌だというので共学校を希望しました。当時は今よりも共学の進学校は少なかったのです。渋谷学園渋谷も開校しておらず郊外の学校が多く、通学時間も長い学校ばかりでした。

 そこで、余程同性だけの人間関係に不安がない限りは、つまり別学に拒否感がなければ共学でも別学でもいいと割り切ることです。同性だけの学校には異性の目を意識する必要がなくオープンな雰囲気になるというメリットもあります。

◆しっかり勉強させる学校か、自分で勉強する学校か

 偏差値がトップクラスの学校に入学して安心していたら、学校として大学受験対策は全くなく困ったという声を聞きます。優秀な生徒を集めて大学のような高度な授業を行うけれど、受験勉強は自分でという学校も多数あります。

 大学進学実績重視の志望校選びではこの点も要注意です。学校で対策をしてくれなくとも、学友が自主的に勉強する学校では自分も勉強しないと不安になるので放っておいても大丈夫です。

 しかし、のんびりした雰囲気の学校では高3になってから慌てるということにもなりかねません。この場合は早くから予備校に通うようになります。中学受験勉強の延長で中1から塾通いする生徒も少なくありませんが、高校に入るとその率は高まります。

 逆に予備校が必要ないほど学校で受験対策をしてくれる学校もあります。高2で高校までの過程を全て終え、高3は受験勉強に充てられる学校です。尻を叩かれないと勉強しないタイプのお子さんの場合は、トップ校より少し下のこのような学校の方がいいかも知れません。

◆礼儀作法にうるさい学校か、そうでない学校か

 進学校かどうか、宗教色があるかないかの軸とは別にして「しつけをしっかりする」かどうかという点もポイントです。しつけがしっかりしている学校は安心である反面、窮屈と感じる子どももあるでしょう。合わないのにこのような学校へ入学し、浮いてしまっては悲劇です。

 しかしこの時期に社会性の基礎を身につけることは社会人になっても役に立ちます。不作法な友人に悩まされることも少ないでしょう。どちらが向いているかはお子さん次第です。

◆宗教教育の有無

 ご家庭に篤い信仰があり、この宗教でなくてはという指向がなければ、あまり気にすることはありません。日曜の礼拝が義務づけられていたりしても、信心を強制されるわけではないのですから。人智を越えた存在について考えることは人生で有益なことですから、生理的に受け付けないということのない限り、あまり気にすることはないように思います。

【志望校選び】

 では方針が決まったらどうすればいいでしょう。方針に合致する学校を中学受験案内のようなガイドブックで学校をピックアップします。できればそれらの学校の説明会に行きます。行けない学校は少なくとも学校案内を取り寄せましょう。

 パンフレットも1,2校ではなく沢山目を通すことで学校の特徴や姿勢が見えるようになってきます。(家を選ぶときに沢山見て回る方が目が肥えるのと同じです。)

 家庭の方針に従って好ましくない学校はここで振り落とします。ただし、第三志望、第四志望では全部の条件を満たすのは難しくなるので、ランクづけしておくといいでしょう。

 そこで初めて偏差値表を見ます。絞り込んだ志望校候補を偏差値表に印をつけます。入試日が複数回ある学校が多いので、忘れずに印をつけます。偏差値のランクが5刻みで上位の学校から下位の学校まで含まれるように表の中から選択します。上下10つまり幅で20は選択肢に加えます。

 これで受験チャートが一応完成します。一応と言うのは、入試問題のタイプの違いがあるからです。あまりにも入試問題が異なる学校を選んでしまうと、受験勉強の方向が定まらなくなるからです。

 第一志望校と似た傾向の学校か、基本的な入試問題を出題する学校を最終的に残します。

 また同日に偏差値の異なる学校を2校選んでおく場合もあります。直前のコンディションや出願状況、早く受験した学校の入試結果などにより、どちらを受験するか選択する「ダブル出願」です。これでかなり万全な受験チャートができます。

 最後の合否判定テストまでには、試験日まで考慮した受験チャートを作り上げて置きたいものです。塾の推薦する学校を受験するしないも、このチャートを参考に判断することができます。塾の言いなりで志望校を決めるのではなく、納得して受験に臨みましょう。

 最後に、学校を見る際に進学実績や偏差値以外に「未来を先取りしている」学校かどうかを考慮していただきたいと思います。多くの私立中学は目先の進学実績を挙げるだけでなく、これからの社会が必要とする人材を育てようとしています。そういう学校の中には、今はまだ進学実績には表れないけれども、将来必ず注目されるであろう学校が隠れています。そんな学校を発見して志望校に加えてはいかがでしょうか。

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