中学受験算数に必須の4つの基礎とは
中学受験をする小学校高学年生を見ていて思うのですが、塾での難しい勉強以前に、身につけておくと良いのに、なかなか重点的にやる機会がないスキルがあります。
一つ目は「概算」です。学校ではおよその数という単元で学習しますが、その単元を過ぎたらほとんど使う機会がありません。でも、これこそが実際に使えたら武器になるスキルなのです。問題を解く前に答えを概算で予想しておくことを習慣づけたいものです。そうすれば、計算間違いをしても気づきやすいし、小数の計算で桁間違いをすることもなくなります。とんでもない計算ミスをそのままにしておく生徒の多いこと。
概算したらだいたい100前後になるはずなのに、2倍や10倍違う答えを書いてすましています。機械的手順に従って計算しているだけだからです。概算の感覚が身につくと、数を塊でとらえる感覚も合わせてつくようで、数を扱うセンスができていくように思います。ぜひ、およその答えを推測する癖をつけたいものです。
二つ目は、「逆算」です。□のある計算ができるかどうか。たし算やかけ算のみの逆算ならみんなできるのですが、ひき算わり算が入ってくると途端にできない割合が高くなります。計算の順序がしっかり理解できていないと逆算はできません。計算のしくみや計算の順序は、学校の授業ではそう多く時間を割かないのに、塾の計算では頻出します。ということは、手に入れれば使える武器になるわけです。さらに、逆算は検算にも使えます。計算を同じ方法で確かめしても、ミスに気づかないことがありますが、逆算をすれば確実に答えをチェックすることができるのです。
また、逆算ができれば、ｙ＝ａｘのタイプの公式も、基本形だけ覚えれば済みます。例えば速さならば速さ＝道のり÷時間だけ覚えれば、後は分からない部分を□にして基本公式で表してから、逆算で求めれば良いのです。道のり＝速さ×時間、時間＝道のり÷速さは覚える必要がないから楽です。整数・小数・分数の四則混合の逆算をマスターするのは大変ですが、とても応用範囲が広くそれだけの価値があるものです。整数の逆算だけでも4年生くらいでやっておくと良いでしょう。
三つ目は「比」の感覚です。教科書では比の分野を6年生にならないと学習しません。しかし、○：○の比を学習しなくても、比の感覚を持つことはできます。例えば三角形の面積で、底辺や高さが2倍になったら、面積が2倍になると即座に答えることができるかどうか、です。公式の意味がわかっていれば、掛ける数が2倍になったら答えが2倍になるとわかって当然なのですが、そういうセンスを持っていない子はとても多く見かけます。地図の縮尺の問題にしても、縦を10倍にして、横も10倍にしたら10×10で100倍になるという説明にすぐにうなずける子とそうでない子に分かれます。2倍や半分、10倍と10分の1などを通して、この感覚を身につけておけたらいいですね。
4つ目は、先ほどの例にもつながりますが、数量の「物理的意味」を感じられるセンスです。例えば歯車の問題では、1周の歯数が2倍になったら、そこにかみ合っているもう一方の歯車の回転は半分になるという逆比の関係がピンとくるかどうか。通り過ぎる歯の数は同じなので、1周の歯数が多ければ回転は遅くなるのが当然ですね。今この問題で、この計算は何を求めているのかを常に意識して解くことです。トンチンカンな計算をする子は、手順に頼りすぎです。公式は知っているのに、当てはめる数値を間違えてしまう。それは公式の物理的意味を理解していないからです。
この4つ目が一番厄介かもしれません。1年生の頃からひたすら計算練習をさせられて、意味を考える暇などなかったのですから。何も考えずに計算しないと宿題に時間がかかってしまう。だから計算の意味なんて気にしない生徒になってしまったのです。
物理的意味を意識できたら公式の使い方に迷っても、その場で再度理解することができます。手順のみ記憶している場合は、誤った数値を当てはめてしまって、答えを間違えても気づきません。余裕のあるときに、「この計算はどういう意味？」とか「ここでは何を求めたの？」と質問してやると、計算の意味を考えるようになると思います。
以上4つのスキルを、本格的な中学受験勉強を始める前に、会得してしまいたいものです。
