中学受験の英語入試について
最近の特徴として英語で入試を行う中学校が増えてきていることがあります。今後の英語の教科化を考えても、無視できない傾向です。ここで一度英語入試についてまとめておくことにします。
■英語入試の現状
産経ニュースによると、英語が必須のカテゴリーを設けた学校に加えて英語の選択が可能な学校も含めると、2016年に全体の約15%、少なくとも32校が英語入試を実施したそうです。首都圏模試センターによると、もっと多く64校が英語入試を実施とのこと。
従来の英語入試のイメージは、帰国子女が受験するものというものでしたが、最近の入試では、「グローバル入試」という位置づけで、帰国子女に限らず受験することが可能となって来ています。小さい頃から英会話を習っていて、英検の資格を取得している受験生は、英語入試を利用できる可能性もありますので、知っておいて損はないと思います。さらに、試験科目が少ない英語入試に絞って受験勉強をするという積極的な英語入試利用の戦略もありうると思います。
一口に英語入試と言っても様々で、国語+算数+英語というパターン(東京女子学園中)や、国算英の中から2教科を選択するパターン(大妻嵐山中)、英作文+面接(埼玉栄中)など、多種多様なパターンが存在します。その他にも、英検の一定以上の級を持つと、入試で優遇される学校があります。ただし、なんらかの優遇を受けられたり英語入試の出願をしたりするのに、英検4級以上という条件の学校もあれば、2級以上という少々ハードルが高い学校もあります。先に述べたように、英語利用の入試では、理科や社会が不要なところが多いので、英語力があるならば、受験勉強が楽になります。
■英語入試が増えているわけ
では、なぜこうした英語入試が増えているのでしょうか。
一つは小学校での英語が「教科」として位置づけられようとしていることがあります。2011年から5,6年生で行われている英語が早ければ2018年から3,4年生でも実施されるようになり、同時に5,6年生は教科として位置づけられます。教科となると、英語に慣れるという現在のものから、教育成果を求められるものになっていきます。当然検定教科書が使われますし、通知表に成績もつくようになるでしょう。
もう一つは、大学入試での英語が変わろうとしているからです。まだ検討中ですが、大学入試の英語がこれまでの文法中心から、読み・書き・聴く・話す、の4技法をバランスよくチェックするために、英検やTOEFLなどの外部試験の導入が謳われていることです。実は大学院入試では、既に取り入れられていて、筆者の子どもは法科大学院の入試の際にTOEFLを受験してその成績を提出しました。ですから、英語の外部試験を利用する流れは大学から徐々に下の学校に降りてきても不思議ありません。
大きい流れとして日本の教育をグローバル化するという方向に動き出しているので、学校英語を学んでも使えないという状況は続かないということです。私立の中高一貫校では、この動きに合わせて英語教育をこれまで以上にグローバルなものとして変えていこうとしているのです。
では、英語入試を実施している中高一貫校は、その受験生たちをどのように育てようとしているのでしょうか。
多くの学校は、英語での授業や留学制度を設けていて、グローバル教育推進の要として英語入試で入ってくる生徒を位置づけているようです。つまり世界のどこへ出て行っても学ぶことができる生徒を輩出すること。筆者自身は、英語そのものの技能について、いずれ人工知能の通訳機能が十分実用になると考えています。だから英語力が今ほど重要視されないことも有りえます。けれども、外国語を通じて多元的な物の見方を身につけることで、視野の広い人材を育成することができるメリットは残ります。
言語というのは思考の枠組みそのものですから、日本語で考える時と英語で考える時には、思考方法が違って来るのは当然です。だから中学入試の英語利用というものを否定するどころか、意味のあるものと考えます。ですから、英語入試が受験に有利だというようなことを横に置いても、一度はこの制度について考えてみるのも良いのではないでしょうか。