中学受験と学校の先取り勉強
中学受験をしたいという生徒の学習サポートを、これまでも、そして今もしています。生徒によってそれぞれ中学受験のスタイルにも違いが有ります。
ひとつは、大手進学塾に通いながら、そこのカリキュラムで消化できなかった部分や、苦手な問題の補習を中心にする場合。もう一つは大手の塾では埋没してしまって、ただ通って授業中に机に座っているだけになるおそれが強いからと、個別指導を求めてくる場合です。中学受験でよく出題される分野は、小学校5,6年生になってから学校の授業で取り上げられます。ところが、その時期では内容を習熟して、入試レベルの問題に対応できる学力をつけるには遅すぎます。そこで進学塾では下の学年から先取り学習をして、難易度の高い問題にも対応できるようにしているのです。
そうは言っても、子どもの論理的能力の発達等を考えると、算数の割合や速さなどの問題は、本当は高学年で学んだほうが、理解が進むというのも確かです。その結果、塾の先取り勉強についていけずに消化不良を起こす子どもが出てきてしまいます。パレートの法則で引き合いに出される20対80の2割に当たる成績上位の生徒は、全く問題なく塾の勉強についていけます。ところが中位の生徒は、理解を手助けするサポートがないと、集合授業で解説を聞いただけでは、先取りする分野をマスターすることはかなわないのです。まして成績下位の生徒にとっては、学年相当に習熟するので精一杯。
私も進学教室へ通塾していない生徒を見ましたが、その子の理解度を見つつ、いかに学校レベルより先へ進められるかに苦心しました。四谷大塚の「予習シリーズ」、学研の「合格自在」、日能研の「計算と熟語」などの教材を、テキスト通りの順番で頭からやろうとせずに、その子の得意不得意を見極めて、「今の実力ならばこの分野は解説を一緒に読みながらできるだろう」とその都度単元を選んでいきました。
大手進学教室では、いつの時期に何をやるかは決まっていて、もちろん小学4年生では難しい分野は取り上げられませんが、入試の基本問題は学習します。例えば、算数でいえば植木算や和と差の問題、碁石を四角に並べる方陣算など。計算も小数と整数の四則混合計算。社会では日本地理の基礎知識を4年生で学び始めます。しかも国語では学習していない漢字で地名等を書かなくてはなりません。
確かにその学年でも何となる内容ではありますが、子どもにとっては、これがどれだけ大変かと少々気の毒に思ってしまいます。保護者の方々も、こうした事情をわかってやった上で、お子さんの受験勉強を応援してくださると良いですね。
さて、一応4年生ならこの程度はできるだろう、5年生ならここまでと考えられてはいますが、子どもには個人差があります。なかなかカリキュラム通りに学力が積み上がっていかないもの。今はできなくても一ヶ月後にはできるようになっているのが子どもです。カリキュラムの単元の、どこができていて、どこが不十分なのかを把握して、不十分な分野を適当な時期に復習して潰していくことが大切です。
また、塾に言われるままに宿題も全ての教科できちんとやろうとしないこと。宿題をすることが目的なのではなく、あくまで学力を上げることが目的です。明らかに消化不良に陥っているのに、生真面目にやろうとするご家庭が、案外多く見られるのが最近の傾向です。小学校と違うので、塾に事情を話せば理解してくれるはずです。あるいは、塾の方から「このようにしたらいかがですか」という提案をしてもらえるかもしれません。せっかく受験専門塾に通っているのなら、大いにその専門知識を利用しましょう。
ところで、低学年でこの記事をお読みの方もいらっしゃるでしょう。先取りして余裕を作っておけるものはないのでしょうか。
おすすめは漢字です。例えば漢字検定を受けて級を上げていく。5級で小6終了程度になっています。私の子どもは小学生の間に3級まで取得しました。国語の入試問題で純粋な書き取りは少なく、漢検で出されるような例外的な読みや、当て字に近い言葉が取り上げられますし、理科や社会で解答に書く用語を考えると中学在学程度の4級を取得しておくと大いに役立つと思います。その他には、物語ではない説明的文章に慣れておくことをおすすめします。国語の読解だけでなく、あらゆる教科の問題をしっかり読むために、説明的文章のスタイルに慣れるのが良いのです。難しい本でなくても福音館書店の「かがくのとも」「たくさんのふしぎ」シリーズから始めてはいかがでしょうか。論理的に筋道を立てて考える力を養えると思います。
小学校の教科と塾での学習内容のギャップをどのように埋めるかについて考えてみましたが、お子さんをよく観察していただいて、苦手に早く気づくことが、学力アップの鍵ですので、その点を意識していただけたらと思います。