親の欲目が志望校選択を誤らせる
11月も下旬になると、がぜん中学受験が近づいた気がしてくるのが不思議です。1月入試まで2ヶ月もないのですから無理もありません。さてお子さんの志望校は決まりましたでしょうか。試験の日程を考慮して、何日にどこを受けて、別の日にどこを受けると具体的に決める時期です。
中学受験を視野にいれて勉強を開始した頃には、「将来○○中学校へわが子を入れたい」というご希望があったことでしょう。誰しも憧れの学校があるもの。長い受験生生活を続けていて、そのままの志望校を保てる人は実はそれほど多くないと思います。希望的観測で夢見ていた志望校と、わが子の合否判定結果の現実のギャップに志望校変更せざるを得ないのが今頃です。
その現時点でも志望校選びに大敵なのが、わが子の実力を見誤ること。今の成績は調子が出ていないだけで、本当はもっと実力があると思い込み、強気の志望校選択をしてしまうことがあります。
また、今現在の実力は把握していて、志望校もそれに沿った学校にしているにも関わらず、「本当はもっとできるのにやろうとしていない」「真面目にやっていない」「だらだらと勉強している」と、成績が上がらないのは子どもに原因があると思い込んで、常に子どもを非難するような態度をとってしまう保護者もいます。
こうした親の態度を子どもは敏感に感じ取ります。すると、親に反発してみたり、さらに親をがっかりさせるような行動をとったりします。どちらも、「もっとぼく(わたし)に注目して!大事にして!」というアピールなのですが、アピールの仕方を間違っているために、少しも伝わりません。それどころか火に油を注いでしまい、結果的にさらに成績が低下してしまうことさえあります。幼い彼らにはそれがわからないのです。
小学校5,6年生の子どもは、志望校を選択する理由も「制服がかわいい」「修学旅行が豪華」「部活が自分のやりたいものだった」等、それほど深い根拠があって選んでいるわけでもないのです。ほとんどが親の希望というわけです。
各教科の具体的内容を指導する場合にも、親子というのはあまり具合が良くありません。ついつい感情が苛立ってしまう経験はどなたもお持ちではないですか。子どもが自分と同じように感じてやれるはずだと思ってしまうあまり、そのとおりに動いてくれないと腹が立つのです。
ところが、わが子を甥や姪に置き換えてみたら、ずっと素直に子どものことを見られるのです。あるいは、彼らをよく観察することで冷静さを保てます。「今この子は何を考えているんだろう。どう感じているんだろう。それを読み取ってやれ」という態度で接すると、等身大に見えてきてあまり腹が立ちません。
私は3番目の子どもで、やっとそうしたことができるようになりました。「あ、今は何を言っても耳にシャッターが下りていて伝わらないな」と目を見て感じられます。そうしたら「別な言い方をしてみたらどうかしら」と違うアプローチを試みることができるのです。
志望校の選択も、現時点での最善策をとるのが、一番効果が高い戦略です。「こんなはずじゃなかった」「もっといい学校が受けられたはず」と思ったところで、どうにもなりません。そうした感情は別の手段でなだめるとして、志望校は合理的な考え方で決めれば良いのです。
「子どもに校風が合っているのはここ」「子どもの学力を伸ばしてくれるのはここ」「様々な経験を積ませてくれるのはこの学校」「人間的に成長できるならあの学校」と、ピックアップしていって、カレンダーを埋めていきましょう。
子どもに中学受験をさせた経験からは、「入学した学校が子どもに合った学校」です。わが家のどの子も「自分の学校が好き」と言って、喜んで通っていました。偏差値で選ばなくて良かったと思っています。子どもにとって、どの学校に決まっても良かったと思えるように、志望校を決めたいものです。