中学受験塾に通うのは何年生から?
最近では小学3年生くらいのお子様をお持ちの保護者の方から「そろそろ塾に通わせたほうがいいでしょうか?」というご質問を受けることが増えました。塾に対する興味を持つ時期が早まっているように感じます。その一つの要因に、大手進学教室が行っている全国レベルの学力テストがあげられます。その結果を見て「何かさせたほうが良いのかしら」と思うようなのです。
それも無理はありません。なぜならこうしたテストは塾通いをしていない子どもにとって、問題がとても難しいからです。全国的なテレビコマーシャルで有名な四谷大塚の全国統一小学生テストでは、出題のレベルをこう言っています。「1年生は70%、2・3年生は60%、4・5・6年生は55%が平均点となるよう、試験問題を作成しています。」
つまり小学校のテストのように簡単に90点以上取れる問題ではなく、平均的なレベルの小学生で60点程度しかとれない問題です。ですから、返却された結果を見て「ずいぶん点数が低いじゃないか」と感じてしまう保護者が多くて当然なのです。
また、中には既に塾に通っている生徒も受けるわけですから、高得点を取るグループにはそういった生徒が含まれているので平均とトップグループの差がつきます。
他のテストでも同様の設計になっているはずです。というのは、満点が何人も出るということは、受験した生徒の点数の上限が頭打ちになってしまい、トップレベルの生徒の差を知ることができないからです。テストを計測器と考えた時に、その分解能が悪くなるわけです。無料でこうしたテストを行う大きな目的の一つは、膨大な生徒が残すデータを収集して分析することにあります。そして、中学受験の模擬試験の判定に活かすわけです。ですから、難しいテスト設計が取り入れられます。
また、このテストで良い成績の生徒は塾としてスカウトしたいし、そうでない生徒には焦りを感じて入塾してもらいたいという意図があります。そうでなければ膨大な費用をかけて無料テストを実施する意味がありません(一説によると四谷大塚のテストは1回数億円の費用がかかるそうです)。
実際に、四谷大塚に比べたらずっと規模が小さいですが、全国レベルのテストを、つい最近私が知っている低学年の生徒数人に受けてもらいました。見事に得点分布が平均の前後に分かれました。中には国語で一桁の点数をとった子もいます。
その子は学力が低いのではなく、問題の形式に不慣れで出題の意味が把握できずに、まともに解答できなかったのです。実力に比べると、極端に悪い結果が出てしまいました。それでも、親御さんとしては焦るわけです。「こんなので大丈夫だろうか?」と。
学校ではトップクラスの生徒でも、平均を大きく上回ることはありません。基本問題はしっかりできていますが、発展的な内容や、見たことがないような問題があって解くのに苦しんでいました。ところがすでに塾に通っている子は、問題の形式にも慣れていて、偏差値60オーバーの結果が出ました。
例えて言えば、『初めてテニスをする子どもを集めて試合をさせる。その中に事前に練習してきた子と、ぶっつけ本番で臨む子がいる。』そんなイメージでしょうか。当然事前練習した子の方が上手に決まっています。
小学校3年生くらいで塾に通えば、塾の授業やテストに慣れることができますが、まだ本格的に思考する問題を解くには幼すぎます。読み書き計算の基礎力UPであれば、家庭学習で十分です。早くから塾通いをしている生徒の中には「習っていないからできない」というスタンスが身についてしまっている子がいます。
早くから教えられ慣れていると、解き方は自分で考えるのではなく、誰かから教わるものだと思い込んでしまうようです。初めて出会う問題に対して、考えることを拒否する姿勢が強くなります。
ですから、もし、6年生で中学受験をするためにプラスアルファを望むならば、小学校中学年では、高学年のような問題の解法をパターン学習するのではなく、どのパターンにも応用できるような考え方を身につけるのが良いでしょう。それは、長文の必要はなく短文をしっかり読み取って理解する力、ロジカルに分析できる力の基礎を磨くことです。
そのための第一歩は、語彙を増やし使いこなせるようにすることです。勉強は書き言葉でするもの。中学入試の問題は、子ども向けの書き方というよりは、大人と同じ言い回しが使われます。ですから、幼い会話体ではなく大人のような書き言葉を読み書きできなくてはなりません。
難しい言葉でも繰り返し触れることで、理解が進み使いこなせるようになります。親子でテレビのニュースを中心とした報道番組や、NHK Eテレの教養番組などを見て語り合うのはとても良いことだと思います。
算数であれば、計算問題は学校にお任せして、少し複雑な文章問題に時間をかけて取り組むのも効果的です。論理的読解の力も養えるので一石二鳥です。
3,4年生はそうした家庭学習をするか、個別指導(家庭教師を含む)で、文章の精読とイメージして解く力を磨くことが、高学年で飛躍するための鍵になると思います。中学年の生徒こそ集団授業ではなく、個人個人に合った指導を受けることができると、大きく伸びると感じます。
文末に、こうした力を養うために家庭学習で、おすすめできる教材をリストアップしておきます。
- ふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集[小学生版]/福嶋隆史
- ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版〕/福嶋隆史
- ふくしま式「国語の読解問題」に強くなる問題集〔小学生版〕/福嶋 隆史
- どっかい算・四則計算のみで解ける難しい文章題 (思考の算数練習帳シリーズ)/認知工学
- スーパーエリート問題集 さんすう 小学1年[新装版] (中学受験を目指す)/前田 卓郎;糸山 泰造
- スーパーエリート問題集 算数 小学2年[新装版] (中学受験を目指す)/前田 卓郎;糸山 泰造
- スーパーエリート問題集 算数 小学3年[新装版] (中学受験を目指す)/前田 卓郎;糸山 泰造
- 最レベさんすう問題集小学1年―段階別/奨学社
- 最レベ算数問題集小学2年―段階別/奨学社
- 最レベ算数問題集小学3年―段階別/奨学社