時事問題を小学生に問う意図はどこに?
2014年入試の時事問題集が各社から発売されています。入試問題を作る都合から秋以降の重大事件は入試ではほとんど取り上げられません。だから問題集も10月末から11月に発売されるのです。時事ニュースに関する問題は、主に社会と理科で出題されます。算数や国語がニュースとはなじまないからでしょう。
来年度入試における時事問題のポイントは、当サイト「鉄人の一通入魂」『来年度入試で狙われそうな周年にまつわる時事問題』で紹介されています。
ここでは入試に何のニュースが出るかの予想ではなくて、学校の授業で学習する範囲にない時事ニュースを、どうして中学の入学試験に出すのかを考えてみたいと思います。
■どのような問題が出されてきたか?
時事ニュースにまつわる問題ではあっても、極度に政治的である話題や、込み入った事柄については出されません。過去の入試問題で出題された項目を見てみましょう。
- 世界のエネルギー事情
- 地球温暖化
- 環境破壊
- リサイクル、リユース
- オリンピックと各国特有の事情
- 日本の選挙
- 世界遺産
- 日食
- ノーベル賞
- 異常気象
どれもその年か、その時期に大きく話題となって、ニュースや新聞で取り上げられた事柄について出題されています。一度しか触れるチャンスがなかったなどというものではありません。大人であれば、だいたいどのようのことかは知っている問題ばかりです。
■時事ニュースを出題する学校の意図
それでは、なぜこのような大人の常識が小学生に入試問題として取り上げられるのでしょうか?
時事ニュースを入試問題に取り上げるのは、勉強だけしているのではなく「広く世の中の出来事にアンテナを張って関心を持つ生徒が欲しい」という学校の気持ちの現われなのです。その証拠が、学校の公式パンフレットやホームページにあります。教育理念や教育方針の中につぎのような文言が多く見られます。
- 将来、様々な分野のグローバルリーダーとして活躍するための基礎人間力を培う(芝中学)
- 次の時代を担う、リーダーとしての資質をもった人を育てていく(高輪中学)
- グローバルな視野に立った時に、日本人として「よりよく生きる」基盤(淑徳SC中等部)
- 自分たちの身近な問題として捉えて、地球の未来を自分なりに考えて、解決するために積極的に行動できる大人に成長してもらいたい(かえつ有明中学)
「次世代のリーダーを育てるのだ、だから次世代のリーダーたるものは、世の中の問題に深い関心を持って、時代の先を見る目を養わなくてはならない」ということです。
したがって入試に出るという理由だけから、単に知識として勉強するという意識では、学校の意図にそぐわないと言えます。テストに出るから勉強する、でなければ勉強しないという生徒は必要ないのです。
普段からテレビのニュースや新聞を読み、家族とその話題について話し合い、その過程で自分なりの考えを持つ、そんな生徒が欲しいのです。時事ニュースを記述問題で問えば、その生徒が自分で考える習慣を持っているか、自分の言葉で語れるかをはかることができます。社会や理科の問題と絡めて問えば、学科で学習した内容をどこまで理解しているかを知ることができます。
つまり、受験勉強のパターン学習では鍛え切れない部分を探る手がかりとなるのです。本当に勉強したいという好奇心を持っているか、自分の意見を人に伝えられるかを試す絶好の課題が時事問題というわけです。
■プラスアルファを鍛えるために
子どもが放っておいても世の中で起きていることに関心を持ってくれればそれでよいのです。しかし普通は子どもの興味はそちらにはあまり向きません。小学生にとっての社会は学校以上には広がっていないので。
塾では一応時事問題の学習もします。今年の重大ニュースのような形で。しかし、付け焼き刃ではなかなか身につきません。毎日の積み重ねが大事です。まだ4・5年生ならば、これからは朝のテレビのニュースを見て、その中で、これはという話題には「今のニュースどう思う?」とお子さんに投げかけてみてはいかがでしょう。
急にそんなことをするのはおかしいと思われるのなら、ご夫婦で話し合うのもよいですね。大人の話に口を挟みたくなるのが、この年頃の子どもですから。その際には、子どもが無知だからと言って、頭ごなしに否定しないようにしてください。まずは、子どもの考えを引き出すことから。それを受けて「たしかにそうだね。でも、こういう見方もあるんじゃないか」と新しい視点を示唆するのが良いでしょう。
すでに入試が迫っている6年生であっても、同じような会話をすることで、ニュースを見る視点を養うという意味では無駄ではありません。社会問題に向かう姿勢を作るという意味で、十分役に立つと思います。ニュースについて家庭で話し合うことは、ある種の総合的な学習の時間になるでしょう。 ぜひ、お子さんとそうした時間を持っていただきたいものです。