中学入試過去問題は親も解いてみるべき
久しぶりに中学入試問題にどっぷり浸かっています。というのも知人から巣鴨中学の過去問の出題傾向を分析されたからです。分析するためには一応解いてみないとなりません。3年分くらい解いてみると傾向が見えてきます。そこで改めて感じたのは、「入試問題は学校から受験生へのメッセージ」だということ。別の言い方をすれば「受験生へのラブレター」。
受験生が解くことはもちろん、答えを導き出すまでいかなくてもかまいません。問題を読むだけで良いので、保護者の方が、ぜひ3年分くらいは志望校の過去の入試問題を見ておいていただきたいのです。
■入試問題の傾向とは
では、過去問を続けて見ていくと何がわかるのでしょうか?第一にはその学校独特の出題の形式です。
【全般】
- ・選択問題が中心
- ・記述問題が主体
- ・難易度が易しい問題から難しい問題へと並べられている
- ・難易度の違う問題が混在している
- ・答えのみではなく、途中経過も採点に加える
【科目】
- ・算数の計算量の多さ
- ・一行問題の有無
- ・図形問題の種類(角度、面積、比や相似等)
- ・特殊算の種類や出題の仕方
- ・新しい傾向の問題の有無
- ・国語の題材文の長さと種類、文章の内容の難しさ
- ・抜き書き主体か、作文要素があるか
- ・漢字や言葉の知識問題の有無
- ・社会、理科の頻出分野と出題形式。選択解答か語句記入か。知識問題の割合の多寡
- ・図表、写真、絵の読み取りと関連する設問の有無
- ・複数分野の融合問題の有無
ざっと考えてもこれだけあります。出題のパターンは多くの学校で傾向がはっきりしています。算数の大問1番が計算問題と一行問題であったり、立体図形の問題が必ず出たり。あるいは国語で漢字の書き取りから始まり、読解が2問続くとか。詩歌などが毎年出題されるかと思えば、物語文がまったくと言っていいほど登場しない学校もあるのです。つまり学校によって、出題形式と出題傾向は、かなり特徴がはっきりしています。
■出題傾向から見える学校の求める生徒像
さらには、問題を通じて、その学校の求める生徒像が浮かんで来ることが、しばしばあります。
例えば国語の問題に引用される文章の内容が、鋭い文明批判を含んでいて、文章と構成が歯ごたえのある、大人が読んでも難しい出典を選ぶ学校は、そうした議論について来られるような、大人びた生徒を欲していると思われます。(「えっ、これを小学生が読むの?」と驚く本文があるのですから)
また、算数や理科で計算と書き出しの作業量が多い出題では、粘り強く正解にたどり着く姿勢の生徒を求めていると言えます。易しい問題をいくつかの段階に積み上げて、それを知恵の輪を解くように、ほぐしながら考えの道筋をさがさせる出題は、推理・分析力のある緻密な脳の持ち主を探しているのでしょう。
よく出題傾向に「場合の数」「図形の面積」「数列」「天体」「人体」「交通」などと分析して書いているWebサイトがありますが、こうした単元や分野では語れない、より細かな傾向が、そこにはあるのです。そして、それは学校のアドミッションポリシー、つまりどんな生徒が欲しいかという学校の意思を表しているわけです。
したがって受験生は、学校が求める生徒像に近い生徒である方が、合格に近づけるわけで、ここでミスマッチした学校を偏差値だけで判断して受験することは、あまり好ましくありません。生徒像がかなり近寄っていれば、仮に合格可能性が低くても合格できることがありますし、反対に合格判定がA判定でも不合格になることもあるからです。
志望校は既に決められて、出願も大方済んでいるでしょうが、複数の学校に合格した際に、どの学校を選ぶかを決める際にも、入試問題とお子さんとの相性を、判断材料の一つに加えてみてはいかがでしょうか。