出遅れてしまった中学受験
■急に中学受験したいと言い出す子ども
先日次のような相談を受けました。
「うちの子が夏休みが終わったら、急に勉強に熱意を見せて中学受験をしたいと言い出したのですが、今からでも間に合うでしょうか?」
この生徒は小学校5年生です。こうした例は珍しくはないのです。同じ学校に通う生徒で中学受験をする生徒は秋に、学園祭・体育祭・オープンスクールと学校見学に出向く機会が多くなります。中には体験授業を受けたりして、その印象が強かったりします。
すると親には口止めされていても、親しい友達には中学校という未知の環境を体験したという新鮮な驚きを話してしまうの止められません。「ぼく中学校で授業を受けてきたんだ。その学校はね…」とこれを聞いた生徒は羨ましく思うことでしょう。
すると、これまで中学受験を意識していなかった生徒まで「ぼくも(わたしも)中学受験してみようかな」と考えるようになっても不思議はありません。子どもの動機は案外そうしたところにあって、ヤル気スイッチが入ることがあります。ただし長続きするかどうかは別ですが。
■ 小5の秋からで中学入試に間に合うのか?
小5の秋はすでに入試本番まで1年と数ヶ月しかありません。進学塾に通っている生徒とは勉強量でかなりの開きがあります。すでに国語ではかなり長文の問題に取り組み、算数も学校では習わない難易度の高い文章題や図形に取り組んでいる塾生に対し、学習指導要領で学んでいる公立小学校の生徒は、まず基礎知識で及びません。さらに応用力においてもかなりのハンディキャップを背負っています。
その点を承知の上で戦略を組めば間に合わないこともありません。全てはどんな受験をするかによって違ってきます。志望校の選択によっては間に合うこともあるし、間に合わないこともある。また、受験準備をしていなかったとしても、これまでの家庭学習の積み上げによって間に合うこともあるし、間に合わないこともある。ケース・バイ・ケースです。
■ スロースタートで中学入試に間に合わせるには
小4あるいは新小5の初めから塾に通っている同級生との差を認めた上で、中学入試で合格を勝ち取るにはどうしたらよいでしょうか。
公立学校での学習内容はしっかりできていて、これから受験勉強に割く時間が十分取れて、志望は難関校でなくても良いなら間に合うでしょう。まずは学校での学習範囲について穴がないようにしておかなくてはいけません。ここができていないのに、中学受験のための学習を始めてもついて行けないからです。
しかしながら残された期間は1年と数ヶ月。いつまでも学校の復習に費やすわけにはいきません。小5までの範囲の漢字と算数の内容については、1ヶ月程度の短期間で復習してしまいます。その上で塾をどうするかです。中学受験専門塾にこの時期から通うのは厳しいです。いきなり入ってもついていけないでしょう。場合によっては授業の内容がチンプンカンプンということも。
予習シリーズを使ってきめ細かい指導をしてくれる中小の塾や地元塾。あるいは個別指導塾やプロ家庭教師にお願いして、専用のカリキュラムを作ってもらうことをお勧めします。中学受験のための網羅的な学習は難しいので、第一志望と似た出題傾向の併願校を選び、よく出題される分野に絞って学習するなどの取捨選択が必要です。その上で基本問題を中心に7割得点でよしとして、カリキュラム組むのが良いのではないでしょうか。
また先生の指導を受ける日だけの学習ではとうてい目標達成できないので、毎日学習することが必要です。課題を1週間分割り振り確認しながら進めるなどペース配分と確認が欠かせません。この部分はご家庭でサポートするようにしたいもの。学習が停滞したりつまずきが感じられたりしたら、すかさず先生に相談するなど素早い対応も必要です。
大学受験や司法試験における受験の神様が共通して言うことがあります。分厚い問題集でなくて良いから、エッセンスの詰まった薄い問題集を繰り返し解き、できない問題をなくすこと。つまり合格点に必要な基本問題で5割得点して、応用問題をプラスして6割〜7割の正解率を目指す。大部分の問題は典型的問題から出題されるということです。
出遅れた分「合格したらもうけもの」と考え、受験勉強を中学入学後も活かすつもりで取り組めば、案外道は開けるものです。ブランドだけで難関校や有名校受験にこだわることもないでしょうし。お子さんに相応しい環境の学校を選び、そこに目標を定めて邁進する。自ずと道がひらけてくるに違い有りません。
受験勉強のスタートが遅くても、勉強を始めたらぐんぐん力がついて難関校に合格する生徒だっているのです。せっかくお子さんがヤル気になったのなら、それを活かさないのはもったいないですね。