ーAll About受験ガイド高橋公英さんー
わが子を合格に導くヒントとテクニック

夏休み、たっぷりある時間をどう使う?

中学受験を志す者にとっては学校の授業がなく時間がたっぷり取れる夏休みが、学習でうまく行っていない点を軌道修正する最後のチャンスです。普段は学校の宿題や行事をこなしながら塾のテキストを仕上げるのに汲々としているはず。ここでなんとかしたいですよね。

■実は少ない自由に使える時間

とは言うものの進学塾に通っていると夏期講習が待っています。受験生であれば学校の授業と同じようなスケジュールになっています。

例えば日能研のホームページのある教室の夏期講習の日程は次のとおりです。

【小学6年生】

7/21〜8/10、8/16〜8/26 土曜はテスト、日曜は休講、他は8:15〜14:50授業

【小学5年生】

7/23〜8/6、8/16〜24 日曜は休講、テスト3回

3年4年生では1週間程度の夏期講習が、高学年では夏休み中にびっしりと予定されています。ですから高学年では夏休み中に不得意科目や消化不良のあった分野を何とかしようと思っていても、夏期講習で毎日の予習復習するのが精一杯ということになります。とても不得意科目や不得意分野に手が回りません。

昔ある塾の保護者説明会で聞いた話があります。夏期講習で勉強漬けにすることで、「楽しいはずの夏休みをつぶしてしまったのだから、合格しなかったらばかみたいだ。しょうがないから勉強するか」と受験生に諦めさせるということです。

たしかに小学生の子どもが受験勉強に身を入れるのは夏ぐらいからです。秋になってもまだ本腰が入らないスロースターターもいますが。

しかし、その自覚をつけさせるために夏期講習の時間が多いのだとしたら、本来の目的とずれているように思います。もちろん夏前までに学習した内容の総復習という位置づけが本来の目的ですし、そのようにカリキュラムも組まれています。

■学力の穴を意識する

進学塾のカリキュラムは、トップ2割の生徒のことしか考えていないのではないかと思うことがあります。塾のテキストには小学校で学習する内容に比べて難しい内容が次々出てきます。解説はしてくれますが、ついていけるかどうかは生徒次第。学校の勉強では秀才ぞろいでも、どこかに穴のある生徒はたくさんいます。夏に総復習をするやり方も、通常1週間かけて進む内容を1〜2日で済ませていくスピードです。トップクラスの生徒でないと付いていくことができないと思います。

先のスケジュールでは、それをいつ埋めろというのでしょうか。それは講習中に以前できなかった分野が再登場したときにクリヤーしろということです。けれども生徒にその自覚がなかったら、また同じように「わからない」状態のまま次の分野へ進んでしまいます。

つまり不得意分野を自分で意識していないと気づかずに通りすぎてしまうのです。このように客観的な目を持つ生徒は学力が伸びていくので、できる生徒は益々できるようになり、そうでない生徒は学力が停滞したままということ。

過去のテストなどからお子さんの苦手分野などを洗いだしておいて、夏期講習の予定と照らし合わせ、「明日の授業は大切だからしっかり聞いてくるように」言い聞かせたり、帰宅して理解度を確かめたり、復習をきっちりさせるなどサポートしてやってください。学力を上げるには「できなかった問題をできるようにする」ことが近道ですから。

■塾の休みを活用する

初めて高学年の夏期講習を迎えてみると、その進み方の速さに驚かされます。うっかりするとそのペースに飲み込まれて夏休みを終えてしまうのです。

絶対に役立つ中学受験専門プロ家庭教師からの必勝アドバイス!「今日から夏休み終了までの注意点」の記事にあるように、夏期講習の休業期間を上手に活かさないと消化不良のまま9月を迎えることになってしまいます。まとまった時間はお盆休みくらいしか取れないのです。塾によってはお盆休みも3日間くらいしかありません。場合によっては夏期講習を休ませるのもありかも知れません。得意な分野であれば休んで家庭学習に回してしまうわけです。

夏休みの目標は夏期講習を終えることではなくて、知識や学力の穴を埋めることを忘れずに。

■3,4年生だったら

3,4年生の夏期講習はせいぜい1週間〜10日です。時間はたっぷりあります。苦手分野を重点的につぶすことが可能です。もちろん勉強漬けにする必要はまだありません。時間をかけてじっくり考える問題に取り組むのも良いでしょう。

最近の小学生を見ていると、徹底反復練習が全国的に浸透しているためか、計算や漢字は得意だけれど、ちょっと視点を変えた問題に弱い傾向が見られます。また急がされているので、問題をしっかり読まない生徒も少なくありません。読めないのではなくて、読み飛ばしてしまうというのでしょうか。つまみ食いして理解したつもり。速読ならそれで良いのですが、設問に答えるとなるとそれでは済みません。見落としが発生してしまいます。

中学年ではスピードよりも設問を繰り返し読んで、問題の意味をしっかりつかむようにしたいものですね。

■小学生に高校受験生のような学習態度を望むのはムリ

中学受験しましたという親御さんはそれほど多く無いと思います。ご自身の受験は高校受験だったり、大学受験だったり。

中学受験も学力重視なので、ついついそれらの受験と同じに思ってしまいます。けれども受験生は小学生。まだまだ子どもです。受験勉強は出題範囲からよく出題される分野をきっちり学習して6割〜7割正解出来れば合格できます。どれだけしっかり学習するかが勝負なのです。わかっていてもそれができないのが小学生というもの。いかにモチベーションを上げてやる気を出させるかにかかっています。

塾の休業期間は苦手の克服に使えると書いたことと矛盾しますが、受験生のストレスが溜まっているようなら、塾のない日に目一杯遊ばせてストレスを発散することも大事かも知れません。

それもこれもご家庭とお子さん次第なのです。それぞれのお子さんに合った時間の使い方をご家庭でサポートしてあげてください。そして夏休みを有意義に過ごしたいものです。

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