学習内容のギャップを知る
平成23年年度の中学入試が終わりました。今「パパとママの勉強部屋」を読まれている方は平成24年度以降の受験生の保護者の方でしょう。鉄人会の先生方と同じく私も毎年、毎回同じようなことを言い続けている気がします。
しかしながら受験生も毎年入れ替わるので、初めて読まれる方が大部分。そこで多少の重複はお許しいただきながら色々書かせて頂いています。
今回は新しい受験生を意識して学習指導要領の内容と中学入試問題のギャップについて取り上げます。
■お子さんの教科書を読みましょう
小学生のお子さんをお持ちの保護者で、教科書の中身までチェックされる方は少ないと思います。新年度に教科書が配布されたらぜひ中身をご覧になってください。
ご自分たちが小学生の時と比べると、大判で薄くカラフルになっていることに気づきます。23年度からは学習内容が少し増えて時間数も増加することになりました。一例をあげると算数の分数について、5年生で扱っていた同分母の足し算が4年生に下りてきます。また分数かける整数は5年生で扱うようになります。
こうしてゆとり教育は見直されましたが、中学入試に立ち向かう場合に学習指導要領の内容で十分なのでしょうか。
インターネット時代の今は、そうしたことを一般の人間でも知ることができます。学習指導要領そのものを読む必要はありません。教科書会社のホームページには各学年の単元表が公開されています。
これを1年から6年まで眺めるだけで色々なことが分かってきます。お子さんが今どの単元を学習していて、それが後でどこへつながるのか。それともその学年で終わってしまうので復習が必要かもしれない、などと考える材料にできるのです。
■中学入試問題のレベルを知ろう
中学入試問題では小学生の知識範囲を超える問題は減ってきました。けれども小学生の知識を総動員して解くような問題が増えているので、けして易しくなってはいません。むしろ小学生の学習範囲の縛りがあるからこそ難しいという問題もあります。
小学校6年生の算数で習う比や割合。これは中学入試では重要な分野です。ところが学習指導要領において割合は5年生の3学期、比は6年の3学期に登場します。他にも重要な単元は6年生になってから学習するものばかり。
このように小学生の学習範囲を超えなくても中学入試のタイムスケジュールからすると、全然間に合っていないのです。
また基本中の基本である計算問題でも入試では一捻りしてあります。例えば整数の計算では次のような形に。
42−35÷□×(8−2)=12
典型的な逆算の問題です。足し算を引き算で、引き算を足し算で、掛け算を割り算で、割り算を掛け算で検算する習慣がついていないとできません。□が式の途中にあるので、どこから手をつけてよいのか途方に暮れてしまうのです。このレベルの問題でつまずいてしまう生徒は大勢います。
中学校としては、さらに少数や分数をこれに加えて、子どもの計算力を測る問題とするわけです。
中学入試問題も過去問題集を書店で見るか、公式ホームページで問題を公開している学校の入試過去問を見てください。どのレベルの学力が要求されているかがわかります。偏差値50前後の中堅校の入試問題が簡単ではないことに気づかれるでしょう。もちろん入試問題は100点満点でなくても構わないのです。60〜70%の正解で良いので多少割り引いて考えます。
■私立中学校が見ているのは応用力
PISA型学力という言葉があります。OECDが加盟先進国対象に3年毎に行っている学力調査で、日本の順位が上がったとか下がったとか報道されているのを耳にしますね。
この調査は基礎知識を調べる問題と、そのリテラシー=応用力を調べる問題で構成されています。中高一貫校の入試問題はそのほとんどがリテラシーを見るようにできていると言っても言い過ぎではありません。
リテラシーはどうやってつけましょうか。典型問題のパターン学習をして身につける方法。考える方法を身につけて自分で解法を見つける方法。処理能力の高い子ども、じっくり型の子どもなど、お子さんによって向き不向きがあると思います。塾や家庭教師の先生と相談してお子さんに合った学習法を取り入れてください。
共通して言えることは、応用力は問題の練習量に伴って付いてくるもの。基礎知識を学習した上である程度の量をこなす必要があります。入試では処理スピードも要求されますし。
というようにスパイラルに学習して苦手を一つずつ潰していくことが実力アップへの近道です。
低学年・中学年で勉強ができたお子さんの中には、簡単な問題をノートに書かず頭の中だけで適当に解いていたために、難しい問題でケアレスミスが無くせないケースがよく見られます。卓球の福原愛選手が1000本ラリーを毎日続けているように基本が大事です。例え易しいと思える問題でも、きっちりノートに書いて解く習慣をおろそかにしないことです。
「ノートをきれいに使う=答案をきれいに書く」ですから、すべての教科で低学年から心がけておきたいですね。
■敵を知り己を知れば百戦危うからず
小学校の学習内容、お子さんの学力、志望校入試問題とのギャップこれを知ることで、対策を練ることができます。来年度入試まで時間のある今の内に、こうした作業をしてみてはいかがでしょうか。