ネット社会だからこそ目で見て志望校を選ぶ
ゴールデンウィークも過ぎ学校説明会が始まりました。複数の学校が一堂に会する合同説明会も多数開かれます。
■要旨
インターネットで様々な情報が入手できるようになった今、逆にそれに振り回されない志望校選択が大切。私の一番上の子どもが中学受験した頃は、公開されている情報は少なく学校説明会と中学受験案内本が頼りでした。公式な情報以外のソースは進学塾が開く説明会や公開模試の後の保護者会しかなかったのです。近所に私立中学に通っているお子さんがいると、その親御さんから話を聞いて、同じ学校のファンになってしまうということが多くありました。
それが今はインターネットで公式ホームページを各学校が持ち、さらに口コミサイトや掲示板などで非公式な情報も手に入るようになって来ています。パンフレットがPDFファイルで見られたり、学校行事の様子が頻繁にアップデートされる学校もあります。
しかし入手できる情報が洪水のように押し寄せるようになった今では、それらの情報に振り回されてはいないでしょうか?「○○中学校はインターネットの掲示板に問題があったと書いてあったから、受験するのはよします」という声も聞きます。
ちょっと待ってください。その情報の出所は確かですか?今回は情報化社会の志望校選びについて考えてみましょう。
■志望校についての情報ソース
志望校の情報をどのようなソースから入手できるかリストアップしてみましょう。
<印刷物>
- (1)学校案内(パンフレット)
- (2)中学受験案内本(多数の学校の基本情報が1冊にまとまっているガイド)
- (3)中学受験関連書籍(大手書店には専門コーナーがあります)
- (4)中学受験関連雑誌
<インターネット>
- (1)学校公式ホームページ
- (2)私立学校協会のサイト
- (3)中学受験情報サイト
- (4)口コミサイト、掲示板
- (5)個人ブログ(受験生や在校生が書いているブログ)
- (6)メールマガジン
<ヒューマン・コミュニケーション>
- (1)学校説明会、オープンキャンパス
- (2)私立中学校合同説明会
- (3)文化祭、体育祭
- (4)進学塾の説明会、保護者会
- (5)塾や学校の保護者の口コミ
- (6)親戚、知人の生徒
■得られる情報の種類
ソースを眺めてみると、そこから得られる情報には大きく分けて2種類あります。それは「本音」と「建て前(立て前)」です。学校が発表する情報は学校に不利なものは含まれないことが多く、建て前になりがちです。一方で受験生が知りたいのは本当のところはどうなのかという「本音」です。
そこでインターネットの口コミや保護者のネットワークの口コミに関心が集まるわけです。これは当然のことでしょう。入学した後はどうなのか知らずに子どもを学校へはやれません。
■口コミ情報の特性
本音を知るには重宝する口コミですが、口コミ情報つまり噂には特性があります。
噂話というのは実は、求められている情報が十分に得られない時に、少ない情報を継ぎ合わせてストーリーを組み立ててしまうという性質があります。ネット社会で情報が溢れているようですが、実は個人個人の細かい関心事にまで分解していくと、ごくわずかな情報しか見つけられないのです。
また顔の見えない人から伝えられるより、個人が想像できる相手からもたらされる情報に、より信頼性を感じるという特性もあります。それが口コミ情報が強力な伝搬力をもつ理由です。
さらにマイナス情報は広まりやすいという特徴も備えています。例えば商品のレビューが書かれる価格比較サイトを例にとりましょう。
「こんな不具合があった」という体験のある人は、掲示板に書き込もうとうする強い動機を持ちます。一方で期待通りの商品で普通に満足した場合は何もアクションを起こさない人が多数です。「とても良かった、だから他の人にも勧めたい」場合に書き込む動機となります。
ですから受験が絡む場合は、「合格して入学したけれども自分は満足できなかった」あるいは「受験したけれども合格できなかった」などマイナスの感情がある人の方が多く書き込みしがちです。
特に匿名の掲示板では、書き込みの内容が当事者のものなのかどうか、そしてそれが事実なのかどうか確かめる手段がありません。
またマイナス情報ほど消えずに長く残るという性質もあります。数年前に事実としてあった事件でも、その後学校側が対処して改善していたとしても、当時の在校生にとっては事実として記憶に残ります。
このように口コミ情報は
- (1)必要とされている情報が少ない時に
- (2)伝える人の主観や解釈を加えながら
- (3)マイナス情報ほど強く長く残り
- (4)いつの出来事だったのか
- (5)その噂を流しているのは誰かが特定できない
という特性があることを知っておく必要があります。
■間違いにくい志望校選び
ではネット社会で志望校選びはどのようにしたら良いでしょうか。
受験する学校のスクリーニング=受験候補のリストアップには、ネットの情報を活用して構いません。何百校もある学校を全て見て回る時間が取れるにこしたことはないですが、普通はできないでしょう。
数校〜十校程度に絞り込んで、説明会や見学会に出かけてください。肌で感じる雰囲気というのは視覚媒体のみで知る情報の何十倍もの密度があります。ここで合わないと感じたら、偏差値がどんなに高くても選ばない方が無難です。
そうして選んだ学校に悪い噂があったらどうしたら良いでしょうか?思い切って学校に聞いてみてはいかがですか。もちろん他の保護者の前で手を挙げて質問するのではなく、個別に「こんな噂を耳にしたのですが」と先生に尋ねるのです。その時の説明や対応がまた学校の姿勢を知るきっかけになるに違いありません。
直接ご自身の目で学校のある地域を知って、キャンパスや校舎を見て、先生方や生徒の雰囲気を肌で感じることが何より大事だと思います。
もし10校20校と見て回れたら、きっと学校を見る目が肥えてくるに違いありません。家選びと同じです。受験の年がやってくる前から学校見学を始めることをお勧めします。