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2018.11.08配信
絶対に役立つ中学受験専門プロ家庭教師からの必勝アドバイス!
わが子を医学部に入れるための中学受験大作戦!(その4 医師を目指す小学生のお子様に映画『博士の愛した数式』をおすすめしたい3つの理由)

2006年に公開された映画『博士の愛した数式』は、小川洋子による原作が高い評価を受けたこともあり、公開当時は大変な話題になりました。ご覧になった親御様も多いのではないでしょうか。
 交通事故で記憶が80分しか持続しなくなってしまった寺尾聰演じる元数学者である博士と、彼のもとに訪れる深津絵里演じる家政婦の杏子、そしてその息子であるルートが互いに心を交し合う物語が描かれたこの映画を見直してみると、将来医師を目指すお子様にこそぜひ見て頂きたい作品であることを強く感じます。

その理由を以下の3つに分けてご説明して行きます。

  1. 数字に対してポジティブな印象を抱くきっかけになるから。
  2. 医師として不可欠となるコミュニケーション力を高めるための原体験となるから。
  3. 国語が苦手なお子様にとって心情理解力を高めるための教材になり得るから。

《理由1 数字に対してポジティブな印象を抱くきっかけになるから。》

医師となるために医学部を目指すうえで数学が得意であることは、この上ないアドバンテージとなります。その数学のベースとなる算数を受験生であるお子様方は現在学習していますが、有名なサッカー漫画のごとくに「数字は友達だ」という感覚を持って欲しいのです。
 この映画の中で、博士は数字に対して常に深い愛情を向けており、それは言葉として何度も表現されます。例えば初めて杏子に会った際に靴のサイズが24であると聞くと「実に潔い数字だ」と、また誕生日が220と聞くと「チャーミングな数字だ」など、まさに個性を持った人間を愛するかのように、数字への愛を語ります。時には友愛数(220と284のような、約数の和が相手の値と等しくなる関係にある数字)に対して「神の計らいを受けた絆で結ばれ合った数字」と、哲学的とも思える言葉を表すこともあります。こうした博士の言葉は、はじめのうちは数学者であるが故の数字に対しての独特な感覚によるものと感じられますが、言葉を発する寺尾聰の柔らかく、優しく輝く表情も相まって、次第に聞いている側も博士と同じ様に数字に対して親しみが感じられるようになって行きます。そして、杏子が仕事の合間に冷蔵庫の製造ナンバーが素数であることを嬉々として調べるように、数字への接し方自体が変わってくるような感覚にも包まれるようにもなるのです。
 数字に対する深く真摯な愛情を抱く博士の姿を見ることは、お子様方の数字に対する感覚によりよい影響を与え、数字が好きに、さらには算数自体にポジティブな意識を持つことができる可能性が十分にあると言えます。

《理由2 医師として不可欠となるコミュニケーション力を高める原体験となるから》

日本の大学医学部のカリキュラムが、これまで以上に臨床学習の時間を増やすようになることに象徴されるように、医師に高いコミュニケーション力が求められる傾向はこれから一層強くなっていくことは明らかです。患者にとって心を開きやすい環境を構築することも、医師に求められる力のひとつとなるように思われます。 この映画の中では、それぞれの人物が相手の状況を受け止め、相手を想いやる気持ちを自然に表す姿が全編に渡って描かれています。
 特にこの映画を見ていて深く印象づけられるのは、家政婦の杏子を演じる深津絵里が博士に向ける笑顔の美しさです。その笑顔は家政婦として雇用主に向ける仕事として作られた笑顔ではなく、相手を受け止め、尊重し、その相手と共有する時間を慈しむものとして深く心に刻み込まれます。記憶が80分しか持続できない博士に対して、深津絵里が戸惑いの表情を色濃く見せるのは初日だけ、映画にしても数分のことで、それ以降は、時に博士の言動に驚かされることはあっても、ほとんどの時間を柔らかな笑顔で博士と接しています。特に仕事を始めて2日目の朝、家を訪問した深津絵里に博士が前の日と同じく「君の靴のサイズはいくつかね?」と問いかけます(博士の中では前日に同じ質問をした記憶は残されていません)。それに対する深津絵里の「24です。4の階乗です!」と応じる際の笑顔は、その場の空気を一気に華やかにさせる輝きに満ちたものです。これだけの笑顔ですから映画を製作する側としても強調したくなるのではと思われますが、実はこの映画で深津絵里の笑顔のアップは極端に少ないのです。あくまで自然に深津絵里の姿を映し出して、博士との時間の中に深津絵里の笑顔が自然に佇んでいることを伝えようとする製作者の意志も伝わってきます。
 10歳であるルートが68歳の博士に対して向ける視線もまた自然な優しさに包まれています。博士が些細なことでショックを受けたり、落ち込んでしまった際には、ルートもまた深く落ち込み、「余計なことを言うんじゃなかったよ。」「僕はあの時の悲しそうな博士の顔、忘れない。」などの言葉をつぶやくのです。そうしたルートの姿からは、年齢差や相手の置かれた特殊な状況にとらわれることなく、相手をごく自然に受け止め、自然に寄り添う行動の尊さが強く感じられます。
 博士がルートに向ける視線もまた優しく、年齢差を感じさせない友人関係を、博士自らがゆっくりと築いて行くのです。このように、3人がそれぞれ互いを想う深い優しさが全編にわたって描かれている作品なのです。
 彼らの姿を心に印象づけておくことは、お子様方が将来医師の道を目指される際に、他者を想うこと、受け入れることの重要性を自らの中で喚起されることにつながると思われます。コミュニケーション力を高めるためには、美しく相手を想い合う姿を原体験として胸に刻み込んでおくことが重要と考えます。この作品はそうした貴重な原体験をお子様に与え得るものとなるでしょう。

《理由3 国語が苦手なお子様にとって心情理解力を高めるための教材になり得るから》

 

お子様が理系科目は強いながら、文系科目、特に国語の物語文読解が苦手でいらっしゃるような場合には、この作品を心情理解の力を高めるための教材として使われることを強くおすすめします。
 これまでも述べてきましたように、この作品に登場する人物達は深い優しさを有しており、そのキャラクターには驚く程に裏表がないのです。博士はもちろん、杏子もルートもまっすぐに気持ちを表します。中学受験国語の物語文では、そうしたまっすぐな気持ちの表明よりも、心と裏腹な表情や、素直に気持ちを表せない人物の言動の方が多く出題対象となりますが、そうした複雑な心情を理解する前段階として、特に物語文が苦手なお子様は、まずは直線的な、裏表のない心情の理解をステップとされることをおすすめします。この作品の人物たちの言動を追っていくことで、物語文の心情理解の基本演習を積むことができるのです。
 国語の視点から、注目したい2つのシーンがあります。まず杏子が博士を外に連れ出すシーン、そしてルートと博士が滝の前で数字について語り合うシーンです。これらはいずれも、人物達の関係がより深くなっていることが表される局面なのです。前者では部屋からほとんど外に出ようとしない博士を外の世界を見せようとする杏子の意向に博士が従うという変化、後者では初めて二人が互いに手をつなぐことに象徴される関係の深化が、それぞれ表現されているのです。そしてこの2つのシーンに共通するのが、美しい風景の描写です。博士と杏子のシーンでは満開の桜が、博士とルートのシーンでは滝と、やはり木々に咲き誇る花々。そうした美しい風景に合わせて抒情的なピアノの響きが流れてきます。全編に流れる音楽の美しさもこの映画の特徴と言えます。
 美しい風景と音楽が、博士と杏子、ルートの三人の心の交し合いが美しく結実していることを象徴していることを視覚と聴覚をもって感じられれば、それだけでもこの作品をご覧になる価値があると考えます。

実写の映画は基本的に大人向けのものが多く、小学生に見せることに躊躇してしまうことがありますが、この作品は過激な暴力描写も、大人向けの恋愛的要素もありませんので、心配なくお子様にすすめられると思われます。様々な愛に満ちたこの作品にお子様方が触れられることが、医師を目指されるうえでの貴重な体験になると強く感じています。

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室長 貝塚正輝
(筑波大学附属駒場中高卒)

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