ーAll About受験ガイド高橋公英さんー
わが子を合格に導くヒントとテクニック

厚みのある学力をつけるには?

■ショートカット(最短距離)を急がないで!

神戸女学院大学名誉教授で多くの著作を出している内田樹氏が雑誌に掲載された記事をブログにあげ、つぎのように言っています。

---引用開始---

〜前段省略〜

「ここまで到達すれば、こんないいことがある」という利益が事前に開示されていた場合、人間は「では、どうやって最短時間、最小エネルギー消費で、『そこ』にたどりつくか」を考えるからである。最小の努力で、最大の報償を得る方法を考える。費用対効果の最もすぐれた学習方法を探し始める。当たり前のことだ。

日本の子どもたちも大人と同じように合理的に思考した。だから、「最小の学習努力で、高い評価を得る方法」を考えたのである。

文科省やメディアの口ぶりを見るとどうやらTOEICで高いスコアを取ることが英語学習上もっとも報償が高いらしい。では、最小の学習努力でTOEICのスコアを上げる方法を考えよう。そういう流れになる。さいわい書店にはその手の本が並んでいる。「6週間でスコアが100点上がる方法」とか、「居眠りしながらヒアリング能力が向上する方法」とか、いくらでもある。

むろん子どもたちは「6週間で100点上がる方法」より「3週間で100点上がる方法」を選ぶ。 「1週間で」という本があればそれを選ぶだろう。

そういうものである。事前に「獲得できる報償」が示されれば、子どもたちは「最短距離」を探す。 だが、そうやって最短期間に最高効率で身につけた英語力は、むかしの子どもが何年もかかって英語の小説を読んだり、英語の映画を見たり、英語の音楽を歌ったりしながら、じわじわと身につけた英語力と比べたときに、その厚みや深みにおいて比較にならない。「英語ができるといいことがある」というアナウンスが始まってから英語力が劇的に低下したことの説明はこれでつく。

〜後段省略〜
内田樹の研究室2013年3月19日「言語を学ぶことについて」より

---引用ここまで---

氏は英語教育について語っていますが、私が子どもたちと接して感じるのは、全ての教科について似たようなものだということ。特に共感するのは『英語の音楽を歌ったりしながら、じわじわと身につけた英語力と比べたときに、その厚みや深みにおいて比較にならない。』という点です。

このお話のポイントはどこにあるのでしょうか。「回り道や余計な情報と思えるものが、分厚い学力を作り上げる元になる」ということだと思うのです。確かに今の子どもは、幼児や低学年の内から、水泳→スイミングスクール、野球→少年野球チーム、知育→幼児教室と、なんでも専門家に頼んで、早く高い到達度を望まれて育ちます。

泳げなくても浮き輪につかまり水遊びで楽しんだり、親子でキャッチボールをする時間を持ったりする経験なしに、基礎を叩き込まれます。あまり面白くなさそうではありませんか?高いレベルを望むことが間違っているとは思いません。しかし入口からそうでは、人のやる気の根本にある好奇心や楽しむ心が失われてしまうように思うのです。

私たちは大人のカルチャースクールの文化を子どもの世界に持ち込んでしまったのかも知れません。大人はやりたいものがあったら、最短の時間と最小の費用で身につけたいと思うし、それは間違っていません。でも、子どもは大人のような動機があることは稀なので、それでは満足できないでしょう。

学習も同じです。習ったことはできるけれど、習ったことしかできない子どもが増えています。一方で、これからの時代を生きるのに必要な知的能力が入学試験は反映されます。習っていないからできないでは済まされないでしょう。インターネットが一般家庭に広く普及してから10年と少しです。その間の変化を考えたら、これからの10年がどれほど変わるか予想もつきません。だから記憶に基づく知識だけでは解けない入試問題が増えているのです。

問題解決力のある人間を育てるのに必要なものが、先ほど出てきた厚みのある学力ではないでしょうか。社会の用語ひとつをとっても、その背景にあるストーリーまで知っていること。国語の長文読解で引用される出典やそれに近い作品を読んで親しんでいること。算数や理科も身近な物の中で数の操作を身につけ、あるいは不思議の種を探す好奇心を持ち続けていることが望ましいです。

■厚みのある学力をつけるには

進学塾に行き始めてからでは、厚みのある勉強をすることは難しいでしょう。日々の課題に追いまくられて、とても周辺知識までは手が回りません。いつやったらよいのか。それは低学年これまで何度か低学年での過ごし方について触れた中でも書いてきました。

今回も、低学年での時間を大事にするべきだと申し上げたいのです。子どもの好奇心をうまく利用して知識を広げ、行ける所なら行ってみる、実験ができるなら実際にやってみる。知識と体験を上手に組み合わせて知識の厚みを増しましょう。

また、貴重な低学年の時期を習い事で埋めてしまうのは、分厚い知識を作る妨げにならないかと心配です。習い事にはもちろん効用があります。その効用はその習い事を集中してやることで得られるもの。絞り込みが必要です。

机の上のプリント学習をどれだけしても、一度の体験に及ばないことがあります。まさに百聞は一見にしかずです。また近頃では体験学習も盛んですが、だれでも失敗なくシナリオ通りに成功する体験は、質が高いとは言えません。失敗や挫折があって、工夫する余地が生まれ、問題解決力が高まるのです。

失敗を伴う体験にはどのようなものがあるでしょうか。

  • 自然や動物を対象としたもの。相手が思うように動かないから。
  • 人を相手にしたもの。同じく思い通りにいかないから。
  • 工作などのものづくり。設計図どおりに作っても、加工の精度や組み立て精度によっては、うまく機能が果たせないから。
  • 料理する。レシピ通りに作ってもおいしくできるとは限らないから。
  • プログラム作成。スマートフォンのアプリやロボットの動作のプログラミングが子どもでもできる時代になっています。プログラムは正直なので、うまく動作させるには、苦心するから。
  • 手芸やアクセサリー作り。指輪や腕輪をビーズ等で作るのも、デザイン力や加工の技術が養えます。思い通りに作るにはやり直しが必要だから。
  • 旅行やイベントに参加する際に、直行直帰するのではなく、道草を食ったり、予定外のことをする。思わぬ発見があるから。

子どもはオールマイティではないので、あらゆる分野に秀でる必要はないでしょう。サッカーが好きならサッカーに関する本を読んだり、選手名鑑を眺めてデータを記憶したりするのも良いでしょう。

私の子どもは小学生の頃は鉄道が好きで「鉄道ファン」という大人向けの趣味の雑誌を読んでいました。野球のデータブックも好きでした。実は私自身も小学生でアマチュア無線雑誌を読んでいたことを思い出しました。

大人向けの雑誌を読むことで、語彙が増え難しい言い回しも覚えてしまいます。勉強という意識がなくて、それができるのですからこれほど楽なことはありません。子ども向けの新聞を読ませても良いのですが、興味が持てない場合は、好きな分野の大人の本を与えてみるのも一つの方法です。

子どもに幅広く深い知識をつけさせるためには、子ども扱いをやめることが重要だと思います。「子どもだから、ここまでしかできない」「こどもには、むずかしいだろう」と限界を設けてしまうことがないようにしたいもの。子どもが気象予報士の試験を受ける時代です。

のめりこめばスポーツ・芸術・学問・趣味のどの分野でも、すごい力を発揮するのが子ども。受験勉強に入る前に、十分にその能力の基礎を磨いてやりたいものです。

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