家庭学習を外注化する時の注意
私自身が小学生に勉強を教えることもあります。そうすると、集団指導の良い点と個別指導の良い点があることに気付きます。集団指導では参加している生徒の間で刺激を与え合い、インスパイアされることで、学習の効果が高まります。しかし、参加者のレベルが違いすぎると、積極的に参加している生徒とお客さんに分かれてしまいます。
一方で個人指導はその生徒のつまずきポイントに合わせて解説と教材のレベルを調節することができますし、生徒の理解度に応じてその場ですぐに指導を修正することができます。近年、個別指導塾や派遣型の家庭教師の数が増えているのも、後者の利点を活かしたいという保護者の考え方が増えているからかも知れません。
それだけではなく、家庭学習の計画を立てたり進度を管理したりする役割を、個別指導塾や家庭教師に担ってもらう、つまり家庭学習の外注化（アウトソーシング）という側面があるのではないでしょうか。どんなタイプの塾や家庭教師を頼んでみても、週に2〜3回が一般的です。しかも1回2〜3時間。それ以外の時間は家庭にいるわけですから、計画通りに家で学習することで学力が向上するのです。
■外注化できるのは勉強の管理面
先日、中学受験が終わった生徒から、不要になった教材をたくさん研究材料として頂戴しました。並べてみると、一部分なのにすごいボリュームです。もしこれらをマスターできていたら、どんな難関校でも受かるだろうと感じました。それどころか、直前の講習のテキストだけを繰り返し解くだけで、相当な学力がつくでしょう。お子さんが学習中の教材を改めて並べてご覧になって下さい。「こんなにたくさん勉強するのか」と感じられると思います。
勉強というのはやるかやらないかが、はっきりと結果に現れます。スポーツも同じですね。当たり前のことを当たり前に毎日継続できる人が一流の選手になれるのです。いまブレーク中の東進ハイスクールの林先生ではありませんが「いつやるの？今でしょ！」という言葉通りです。
家庭学習でアウトソーシングできるのは、管理の側面だけです。勉強そのものは本人がやらなくてはなりません。しっかり家庭学習できているか、本人のモチベーションをいかに高めるかはご家庭にかかっているのです。
この環境づくりが上手くできているのは多くて20％、残りのご家庭では生徒のやる気スイッチを探し続けています。生徒みんなに共通したやる気スイッチはありませんが、モチベーションを下げる働きかけはあります。
- ・あんたはダメね〜
- ・どうしてあなたはいつもこうなの。
- ・そんなこと言ったってできっこないじゃない。
- ・こんな成績じゃ入れる学校はないよ。
こうしたマイナスの言葉かけは、やる気を削ぐことはあっても、前向きな気持にはさせてくれません。やろうと思ってもできなくて、不甲斐ないのは本人です。
私事で恐縮ですが、例えばこの原稿、1ヶ月の期間を頂いていますが、描き上げて入稿するのはほとんど締め切りの直前です。もっと前に書くことができるのにギリギリになってしまう。学生症候群というような言葉もあるようですが、人間は目に見えるゴールがないとエンジンがかからない、怠惰な生き物です。もちろん私とは違って、十分な余裕を持って行動される方々もいらっしゃいますが。
話が横道に反れました。どんなタイプの塾に通うっても、まずは家庭学習をきっちりやれる環境を整えること。自室からは遊び道具を撤去する。あるいはリビングで勉強する。子どもが勉強中は家族もテレビを見ない。「がんばっているね」と努力を認める前向きな言葉をかける。
こうした努力をした末に、集団タイプが合っているのか、個別指導が合っているのかという段階にやってくるのだと思います。
たとえ薄い問題集でも、何度か繰り返し解いて、ほとんど全てが解けるようになれば、確実に学力はつくのです。司法試験で有名なLEC講師の柴田孝之氏が言うように「できることをいくら勉強しても実力はつかない。できないことをできるようにするのが本当の勉強」なのです。
「塾に通っているから大丈夫」「家庭教師の先生におまかせしているから安心」と任せきりにせず、家庭学習の本体はアウトソーシングできないということを、もう一度見直していただけたらと思います。
